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田澤ルールとは?古臭い日本プロ野球/直接メジャーリーグ挑戦への障壁

プロ野球ファンであれば、「田澤ルール」という単語を聞いたことがあるかもしれません。

アマチュア選手がプロ野球を経ず、直接メジャーリーグに挑戦するのを防止するルールです。

本当にこのルールが必要なのか?

当記事ではそんな観点で田澤ルールについて考えてみます。

 

筆者のプロフィール

野球観戦歴20年超の野球オタクで、元球場職員の経歴を持ちます。
愛読書は公認野球規則で、野球のルール解説も得意としています。

 

田澤ルールとは?

アマチュア選手が直接メジャーリーグ入りすることを防止するために制定されたルールです。

日本のドラフトを拒否してメジャーリーグ入りした場合、帰国後、高卒選手は3年間、大卒・社会人選手は2年間プロ野球でプレーすることが出来ない、とされています。

 

ポイントは「帰国後」が制限されている点です。

 

メジャー挑戦に失敗しても2,3年間は日本プロ野球には入れません。

もしくは、メジャー挑戦で成功をおさめた上で、最後に日本プロ野球に戻ろうとしても2,3年間は日本プロ野球に入団することは出来ないのです。

 

田澤ルールは田澤純一投手の名前に由来します。

田澤といえば2008年、ドラフト1位指名が確実と言われていましたが、日本プロ野球入りを拒否する記者会見を開き、メジャーリーグのボストン・レッドソックスに入団した経緯があります。

 

この直接メジャーリーグ入りを、NPB(日本プロ野球機構)はよく思わなかったのでしょう。

日本の優秀な人材が海外に流出することを防ぐという名目で、田澤ルールが制定されました。

「メジャーに行きたかったら行っても良いけど、簡単には日本プロ野球には戻れないからね?それでも行きたければ行けば?」

というわけですね。

なんとも微妙なルールです。

 

田澤は日本に帰ってこれない?

メジャーリーガーとして大成した田澤の姿を、いつか日本プロ野球で見たいと思うファンも多いのではないでしょうか。

田澤のメジャー入りは波紋を呼びましたが、結果的には田澤はメジャーリーグに定着し、主にリリーフ投手として通算400試合近く登板しています。

 

立派なメジャーリーガーです。

この田澤が、2017年以降、徐々に成績を下げています。

2019年には田澤も33歳となり、選手としてのピークは過ぎた頃かもしれません。

 

日本プロ野球を経由してメジャーリーガーとなった選手は多くの場合、その実力のピークを超えると日本プロ野球に戻り、日本でもうひと花咲かせるケースが多いです。

 

しかし、田澤の場合はこうは行きません。

 

田澤ルールの制約がありますので、社会人出身の田澤はメジャー退団後、2年間は日本プロ野球に入団出来ないのです。

さらに、日本プロ野球に在籍したことの無い日本人選手は、日本プロ野球入りするにはドラフト会議で指名される必要があります。

 

〈つまり田澤は・・〉

・2年間日本プロ野球に入団出来ない

・ドラフト会議に指名される必要あり

 

というわけなので、仮に田澤が2019年でメジャーを去る決断をしたとしても、2020年、2021年はプロ野球ではプレー出来ません。

2021年のドラフト会議で指名を受け、2022年から日本でプレーすることになります。

 

しかしその頃には田澤も36歳です。

ここまでして田澤が日本プロ野球に戻ってくることはないでしょう。

 

田澤ルールが適用された選手は?

田澤に続いて「直接メジャー」が問題視された選手が2名います。

ドジャースに入団した沼田拓巳(現ヤクルト)、ダイヤモンドバックスに入団した吉川峻平です。

 

沼田拓巳(2013年ドジャース入団)

名古屋産業大学を中退し、社会人チームでプレーしていた沼田は、ドジャースとマイナー契約を結びました。

この契約は本来、プロ契約が認められていない時期であり、プロ球団との契約前に必要な手続きを怠っていたことから、沼田は日本野球連盟から除名処分を受けています。

日本野球連盟・・社会人野球を管轄する機関

沼田はマイナーリーグで目立った成績を残すことが出来ず、2015年に自由契約となります。

横浜DeNAベイスターズが沼田の獲得を検討していることが報じられるなど、日本プロ野球入りも期待されましたが、やはり田澤ルールの影響で2015年、2016年とドラフト指名はありませんでした。

 

田澤ルールの影響で日本プロ野球でのプレーがすぐには実現しなかったため、沼田は2015年~2017年までは独立リーグで過ごします。

 

田澤ルールが解除となる2017年、東京ヤクルトスワローズからドラフト8位指名を受け、日本プロ野球入りを果たしました。

 

吉川峻平(2018年ダイヤモンドバックス入団)

関西大学を卒業後、パナソニック野球部で社会人選手としてプレーをしていた吉川は、2018年にダイヤモンドバックスとマイナー契約を結びます。

この契約も沼田と同様、プロ野球契約ルールに反するものであり、日本野球連盟は吉川を事実上の永久追放扱いとしています。

 

吉川は2019年現在はマイナーリーグでプレーしていますが、仮に吉川が日本プロ野球入りを目指す場合は田澤ルールの対象となるでしょう。

 

田澤ルールは国際化に逆行する古臭いルール

日本人選手が海外のハイレベルなチームでプレーすることにネガティブな反応を示すのは野球ぐらいではないでしょうか。

NBAワシントン・ウィザーズからドラフト1巡目指名を受けたバスケットボールの八村塁、レアル・マドリードへ移籍したサッカーの久保建英など、基本的に他スポーツでは若手有望選手が海外進出することは歓迎され、応援される傾向にあります。

 

しかし野球においては、田澤ルールが象徴するように海外、特にメジャーリーグへの挑戦には高いハードルが存在します。

日本プロ野球からメジャーリーグへ移籍するためには、長年一軍でプレーして海外FA権を取得するか、球団と交渉してポスティング移籍するしかありません。

 

しかしながら、球団によってはポスティングを認めておらず、メジャーリーグへの道は開かれているとは言えません。

一度日本プロ野球に入団してしまうとポスティングを使わない限りは海外FA権を取得するまで最低でも9シーズンを日本でプレーする必要があります。

 

一方、アマチュアから直接メジャー入りすることは田澤ルールで制限されています。

国際化が進み、よりレベルの高い環境を求める選手が増える中、ここまでメジャー挑戦を制限している日本の現状は異常であると言えるでしょう。

 

田澤ルールは流出抑止になるのか?

田澤ルールは優秀な逸材が海外に流れ、日本プロ野球が衰退することを防ぐために設定されています。

しかしながら、この田澤ルール、本当に日本プロ野球のためになっているのでしょうか。

 

直接メジャーリーグを表明した上で日本に留まった選手として記憶に新しいのは大谷翔平です。

大谷が直接メジャー入りしていたとすると、日本球界に戻れない期間が3年間生じるわけですが、大谷はそれを嫌がってメジャーを断念したわけではないでしょう。

大谷が北海道日本ハムファイターズに入団ひたのは、球団の育成プランや栗山監督の説得に惹かれたからです。

おそらく、大谷級の選手が直接メジャー挑戦する場合、日本プロ野球に戻れるかどうかなど二の次です。

 

メジャーに骨を埋める覚悟を持って海を渡る選手が大半ではないでしょうか。

 

田澤ルールで足踏みする選手がいるとすれば、メジャーで活躍できるか怪しい1.5流の選手でしょう。

メジャーでダメだった場合に日本プロ野球に戻れないのは苦しいので、それなら最初は日本で、となるかもしれません。

 

要するに田澤ルールでは1流選手の海外流出を阻止することは出来ていないのです。

 

むしろ一流選手が最後に日本に戻ってプレーする機会を奪ってしまっているとも言えます。

今回、メジャーでは難しくなってきた田澤が田澤ルールで日本でプレー出来ないのが最たる例ですね。

田澤ルールは本当に日本プロ野球のためになっているのでしょうか?

そろそろこのルールを見直す時期が来ているのかもしれませんね。