当記事では、こういった疑問を解消するため、ダブルヘッダーの仕組みや過去のダブルヘッダーの事例について解説します。
筆者のプロフィール
野球観戦歴20年超の野球オタクで、元球場職員の経歴を持ちます。
愛読書は公認野球規則で、野球のルール解説も得意としています。
ダブルヘッダーとは
ダブルヘッダーとは、特定のチームがホーム球場において1日のうちに2試合を開催することを指しています。
同じ対戦カードで2試合開催することを「ダブルヘッダー」、対戦相手が変わって2試合開催することを「変則ダブルヘッダー」と呼びますが、ダブルヘッダーそのものが珍しくなった現代においては、変則ダブルヘッダーという単語を聞くことはほぼ無くなっています。
ダブルヘッダーは選手への負担が大きいことから、近年は実施されるケースが無くなっており、1998年以降は日本プロ野球でダブルヘッダーが開催された例はありません。
日本プロ野球最後のダブルヘッダー
・セ・リーグ:1998年10月10日 横浜VS中日@横浜
・パ・リーグ:1998年10月9日 西武VSオリックス@西武ドーム
近年も、雨天中止が相次いだことでダブルヘッダーの可能性が検討された例はありますが、実際にダブルヘッダー開催に至ることはありませんでした。
雨天中止が相次いだことでダブルヘッダーが検討された事例
2016年9月23日、千葉ロッテマリーンズ対東北楽天ゴールデンイーグルス(QVCマリン)の雨天中止代替分の追加日程として10月4日・5日の開催が発表されたが、このうち10月4日が中止となった場合、翌5日にダブルヘッダーとすることも併せて発表された。仮に10月4日が中止となった場合、翌5日の試合開始予定時刻は第1試合が13時、第2試合が18時15分としたが、10月4日は予定通り試合が開催されたため、2016年もダブルヘッダーは行われなかった。
Wikipediaより
このほかにも、予定されていた試合の消化が難しいケースでは、しばしばダブルヘッダーが検討されています。
現在もダブルヘッダーの可能性がゼロというわけではなく、予備日を消化しきってしまった場合はダブルヘッダーが検討されるというわけです。
ダブルヘッダーは当たり前のように実施されていた
近年では雨天中止が相次いだ際に検討される程度で、22年間実施されていないダブルヘッダーですが、かつては当たり前のように実施されていました。
1960年代頃まではプロ野球を開催できる球場が少なく、ドーム球場も無かったことから、変則ダブルヘッダーは一般的なものでした。
1960年代~1970年代にかけては変則ダブルヘッダーから同一カードのダブルヘッダーが主流となりましたが、それでもダブルヘッダーは珍しいものではありませんでした。
ダブルヘッダーによる選手への負担が考慮され、ダブルヘッダーが減少傾向となったのは、1980年代のことです。
このころから、ダブルヘッダーは雨天中止時の予備程度の位置づけとなっています。(1980年代から、ドーム球場が増え始めたのもダブルヘッダー減少を後押ししたと考えられます)
かつては変則ダブルヘッダーが複数組まれたことにより、異なる球場で2試合を戦った例も存在します。
いかに当時が過密なスケジュールで試合を行っていたのかが分かりますね。
<例>1967年10月12日 広島
第1試合:VS巨人@後楽園、第2試合:VS産経@神宮
ダブルヘッダーのチケットの仕組み
ダブルヘッダーの場合、1つのチケットで両方の試合を観戦可能でした。
そのため、チケット代金は通常の1.5倍程度になることが一般的です。
1.5倍の料金で2試合が観戦できるのであれば、お得なチケットと言えそうですね。
22年間のブランクがあるため、今後開催されるダブルヘッダーが同じ仕組みである保証はありませんのでご注意ください。
なお、ダブルヘッダーとはいえ、主催球団が異なる場合はチケットが別となる可能性もあります。
<例>1999年4月3日 東京ドームの事例
第1試合:日ハムVS近鉄 第2試合:巨人VS阪神
開幕戦がダブルヘッダーとなった珍しい事例です。
当時は日ハム、巨人の両チームが東京ドームを本拠地としていたため、このようなケースが発生しています。
この例では、第1試合と第2試合は主催球団が異なるため、チケットは別で売り出され、観客は総入れ替えとなっています。
※厳密にはこのケースは別の対戦カードが2試合組まれているので、ダブルヘッダーの定義には当てはまりませんが、参考としてご紹介します。
伝説のダブルヘッダー「10.19」
最も有名なダブルヘッダーの試合をご紹介します。
ダブルヘッダーといえば「10.19」という方もいるのではないでしょうか。
1988年10月19日 近鉄VSロッテの川崎球場のダブルヘッダーです。
「近鉄が連勝なら近鉄優勝、一つでも負けるか引き分けると西武が優勝」という条件で迎えたダブルヘッダーは、大きな注目を集めました。
第1試合は8回裏終了時点で3-3の同点という試合展開となりますが、ここでポイントとなるのがダブルヘッダーの特別規定です。
当時のパ・リーグには「ダブルヘッダー第1試合は延長戦なし。9回で試合打ち切り」との規定が存在したため、近鉄は9回表に勝ち越すことが出来なければ、優勝を逃すことを意味します。
この状況の中、9回2アウト2塁と絶対絶命の状態に追い込まれますが、見事に近鉄は1点を勝ち越し、9回裏も満塁のピンチを招きながらも切り抜け、第1試合を勝利で飾っています。
この結果、優勝の行方は第2試合の結果次第となりますが、第2試合も白熱した接戦が繰り広げられます。
4-4で9回を終了し延長戦に突入しますが、ここでまたしてもダブルヘッダーの特別規則が立ちふさがるのです。
「試合開始から4時間を経過した場合は、そのイニング終了をもって打ち切り」
延長戦に突入した時点で、試合時間は3時間30分を超えており、実質近鉄の攻撃チャンスは10回表が最後となりました。
しかしながら近鉄は10回表は無得点。10回裏開始時点で試合時間は3時間57分が経過しており、10回裏、近鉄の守備の最中に試合時間が4時間を経過したことで近鉄の勝利の可能性は消滅、西武の優勝が確定しました。
この劇的なダブルヘッダーは決着がつくまで全国放送でTV中継されており、プロ野球ファンの記憶に強烈な印象を残しました。
2020年のダブルヘッダー開催の可能性は?
10.19の印象が強いため、ダブルヘッダーは劇的な展開が見れるかもしれない、と考えているファンも少なくはなさそうです。
それでは、2020年はダブルヘッダーの可能性はあるのでしょうか。
あくまでも予測ですが、ダブルヘッダー開催の可能性はあると考えています。
新型コロナウイルス感染症の影響で開幕は延期となり、交流戦やオールスターゲームの中止が発表される等、試合数は削減の方針で調整が進められています。
試合数の推移についてはこちらの記事が参考になります。
試合数は削減となっても、開幕は最速で6月19日であり、仮にそこから120試合程度を消化するとなると、相当な過密日程が想定されます。
現に1カード6連戦の案も浮上しているほどですので、これだけスケジュールが厳しい状態であれば、雨天中止が発生するとダブルヘッダーの可能性も浮上すると思われます。
喜ばしい状況ではありませんし、まずはプロ野球が無事に開幕できることを祈るばかりですが、22年ぶりのダブルヘッダー開催は現実味を帯びてきているのではないでしょうか。