従来の日本シリーズといえば、セ・リーグの優勝チームとパ・リーグの優勝チームのぶつかり合いでした。
しかし2004年からはパ・リーグにプレーオフを導入、2007年からは両リーグにクライマックスシリーズが導入されたことで、現在はリーグ2位、3位であっても日本一の可能性が存在します。
リーグ2位3位チームが日本シリーズを制覇したケースは、過去5回記録されています。
当記事では、リーグ2位、3位チームによる日本一についてご紹介します。
野球観戦歴20年超の野球オタクで、元球場職員の経歴を持ちます。
愛読書は公認野球規則で、野球のルール解説も得意としています。
下剋上日本一は過去6回!
過去、日本シリーズも制覇した下剋上は6度記録されています。
- 2005年 千葉ロッテマリーンズ (リーグ勝率2位)
※当時はプレーオフであり、プレーオフ王者がリーグ優勝の扱い - 2007年 中日ドラゴンズ(リーグ2位)
- 2010年 千葉ロッテマリーンズ(リーグ3位)
- 2018年 福岡ソフトバンクホークス(リーグ2位)
- 2019年 福岡ソフトバンクホークス(リーグ2位)
- 2024年 横浜DeNAベイスターズ(リーグ3位)
リーグ2位チームによる日本一が4回、リーグ3位チームによる日本一が3回記録されています。
リーグ2位、3位チームが上位の優勝チームを撃破して躍進する様は、しばしば「下克上」と表現されます。
下剋上 / 下克上 (げこくじょう)とは、日本史において下位の者が上位の者を政治的・軍事的に打倒して身分秩序(上下関係)を侵す行為をさす。
各年度の下克上日本一を振り返る
ここでは、過去5回の下克上について振り返ります。
過去5回の下克上日本一のうち、ロッテ、ソフトバンクが2回達成しています。
特にソフトバンクは2018年、2019年と2年連続で2位からの日本一に輝いており、当時は短期決戦の強さが際立ちました。
衝撃の33-4!(2005年ロッテ)
「33-4」として語り継がれる日本シリーズが話題の2005年千葉ロッテマリーンズは、はじめての勝率2位チームによる日本一達成でした。
- パ・リーグ成績は2強
- アドバンテージ無しのプレーオフ
- プレーオフの勢いそのままに衝撃の33-4
- 下剋上により日本一とパ・リーグ優勝の称号も獲得
※当時はプレーオフ優勝チームがリーグ優勝のルール
2005年はソフトバンクが勝率.664と圧倒的な実力を見せつけます。
そこに4.5ゲーム差となんとか食い下がったのがロッテ(勝率.632)です。
3位の西武は勝利5割を下回っており、ソフトバンクと23ゲーム差がつくなど、2強の状態となったのが2005年のパ・リーグでした。
リーグ成績どおり、プレーオフ第2ステージでもソフトバンクとロッテが激突します。
当時はアドバンテージはリーグで5ゲーム以上差がついている場合のみ与えられていたため、レギュラーシーズンで4.5ゲーム差だったソフトバンクはアドバンテージを得られませんでした。
第1ステージを勝ち抜いたロッテの勢いをソフトバンクは止めることが出来ず、3勝2敗でロッテが日本シリーズ進出を果たします。
プレーオフを突破したロッテはそのまま日本シリーズで阪神に4連勝。
この圧倒的な4連勝が「33-4」として世の中に衝撃を残します。
史上初のリーグ優勝以外の日本一(2007年中日)
2007年からセ・リーグにもクライマックスシリーズとしてポストシーズンが導入されます。
その初年度から、中日がリーグ2位から日本一を達成します。
- 2007年はアドバンテージ無し
- 中日がCS5連勝
- 日本シリーズで継投完全試合
- プロ野球史上初のリーグ優勝以外の日本一
2007年のセ・リーグ初のクライマックスシリーズは中日の快進撃でした。
3位阪神との1stステージ、首位巨人との2ndステージを全勝、5連勝でクライマックスシリーズを突破します。
日本シリーズでは、パ・リーグ王者の日ハムに初戦こそ落としますが、それでも勢いは止まらずその後4連勝。
日本一に輝きます。
特に日本一を決めた第5戦では中日・山井が8回をパーフェクトピッチング、9回を岩瀬が3人で仕留め、日本シリーズ史上初の完全試合を達成しています。(継投のため参考記録)
リーグ優勝していないチームが日本一に輝くのは史上初の出来事であり、完全試合とともに記憶にも記録にも刻まれます。
なお、この2007年の中日の躍進は、クライマックスシリーズでリーグ覇者の巨人を破ったこともあり、リーグ優勝の価値を下げるものになりかねないと批判が投げかけられました。
これ以降、リーグ優勝チームにはクライマックスシリーズで1勝のアドバンテージが与えられることとなります。
はじめての3位からの下剋上(2010年ロッテ)
はじめて3位チームで日本一を達成したのが2010年千葉ロッテマリーンズです。
- 大混戦のパ・リーグ
- 3位までの実力は均等
- 3位ロッテの大躍進
2010年のパ・リーグは大混戦の優勝争いでした。
リーグ優勝はソフトバンクが達成したものの、2位の西武とはゲーム差無し、3位のロッテとソフトバンクのゲーム差も2.5ゲーム差と、実力は均衡していました。
実力は均衡していたため、クライマックスシリーズもどこが突破しても不思議ではない状態でした。
ファーストステージでは3位ロッテが2位西武に2連勝、ファイナルステージは最終戦(第6戦)までもつれ込むものの、ロッテが4勝で突破します。
クライマックスシリーズの勢いそのままに、日本シリーズでもセ・リーグ覇者の中日を4勝2敗(1分)で破り、日本一に輝きます。
史上初のリーグ3位チームによる日本一達成ということで、当時は「史上最大の下克上」として話題を呼びました。
リーグ3位までのではあるものの、リーグ成績は首位ソフトバンクと僅か2.5ゲーム差ということもあり、日本一に相応しい実力は兼ね備えていたと言えるでしょう。
実力があれば、短期決戦は勢いに乗ればそのまま日本一まで駆け抜けられるという事例ですね。
下克上へのリベンジ!(2018年ソフトバンク)
- 下克上に苦しめられてきたソフトバンク
- 6.5ゲーム差からの日本一
ソフトバンクはプレーオフ、クライマックスシリーズに苦しめられてきた球団です。
2005年、2010年とパ・リーグでは2度、ロッテが下位チームとして日本シリーズ出場を果たしていますが、この際に敗れたリーグ1位の球団はいずれもソフトバンクなのです。
このソフトバンクが、6.5ゲーム差離された首位西武を破り、日本シリーズ出場を果たします。
日本シリーズではセ・リーグ王者の広島と対戦します。
初戦が引き分け、第2戦が敗戦と序盤はソフトバンクが苦しみながらも、3戦目以降は4連勝。
日本一を達成します。
驚異の強さを見せたポストシーズン(2019年ソフトバンク)
- レギュラーシーズンは怪我人続出の苦しいシーズン
- 短期決戦では驚異の10連勝で日本一に
前年の日本一球団ソフトバンクは、2019年も優勝候補の筆頭でした。
シーズンも快調な滑り出しを見せ、一時はパ・リーグ独走態勢を見せますが、簡単には行きません。
主砲の柳田をはじめ、怪我人が続出。
また、ソフトバンクの主戦力であるキューバ代表の外国人助っ人が国際試合出場で一時離脱するなど、選手の離脱に苦しみました。
最終的には一時8.5ゲーム差離していた西武に大逆転優勝を許し、2位に終わります。
この怪我人や助っ人が復帰したことで驚異的な強さを見せたのが2019年ソフトバンクです。
クライマックスシリーズ、日本シリーズでは本来の実力を見せつけ、負けなしの10連勝。
2年連続下剋上日本一に輝きます。
3位争いからの日本一(2024年DeNA)
- リーグ戦は貯金2と3位争いギリギリの戦い(首位巨人と8ゲーム差)
- 対戦相手はパ・リーグを圧倒的な力で制したソフトバンク
- 日本シリーズ2連敗からの4連勝で日本一
2024年のDeNAは決して順調なシーズンではありませんでした。
首位巨人とは8ゲーム差、4位広島とは2ゲーム差のAクラス入りを何とか守った戦いぶりでした。
しかしポストシーズンに入ってからは失うものは無いと言わんばかりに躍進。
クライマックスシリーズ第1ステージで阪神を連勝で下し、第2ステージでは巨人に4勝2敗と日本シリーズ出場権を獲得しました。
対するはパ・リーグ王者のソフトバンクです。
2位とは13.5ゲーム差の圧倒的なリーグ優勝、クライマックスシリーズも無傷の突破と無類の強さを見せていました。
ソフトバンクの前にDeNAは2連敗、DeNAの下剋上もここまでか…と思われたあと、DeNAが4連勝で日本一に輝きます。
リーグ2位3位チーム同士の日本シリーズは前例なし
ここまで、2位3位チームによる日本一についてご紹介しましたが、過去、2位3位チーム同士の日本シリーズはありません。
クライマックスシリーズはリーグ優勝チームに非常に有利に設計されていますので、やはり両リーグ同時に下位チームが日本シリーズに出場する可能性は低いと言えます。