プロ野球ペナントレース終盤の9月。
ペナントレースを制した優勝チームの選手が最終戦終了後、一斉に一軍出場登録を抹消されます。
毎年恒例のイベントとなっており、これを見ることで優勝を実感出来るというファンもいるくらいです。
では、なぜ優勝チームは全選手を登録抹消するのでしょうか。
当記事では、その理由や経緯をわかりやすく解説します。
筆者のプロフィール
野球観戦歴20年超の野球オタクで、元球場職員の経歴を持ちます。
愛読書は公認野球規則で、野球のルール解説も得意としています。
全選手を登録抹消する理由
全選手を登録抹消する理由、それは、最もベストなメンバーでクライマックスシリーズに臨むことが出来るからです。
かつて中日の落合監督が開始した戦術で、非常に合理的な行為であることから、現在はペナントレース優勝チームは自動的に登録抹消される仕組みになっています。
全員抹消の理由を具体例で解説
より丁寧に解説するために、具体例を挙げてみましょう。
2019年のパ・リーグ王者、埼玉西武ライオンズのシーズン最終戦は9月26日であり、その翌日9月27日には全選手が登録抹消されています。
西武の次の試合は10月9日のクライマックスシリーズファイナルステージです。
最終戦からクライマックスシリーズの出番まで、12日間空くわけです。
登録抹消した選手は10日経てば再登録が可能になりますので、9月27日に一斉に抹消された選手たちはクライマックスシリーズ直前には再登録が可能となります。
ではなぜ、これが球団にとってのメリットになるのでしょうか。
最終戦の直後に、一斉に抹消しなかった場合にどうなるかを考えてみましょう。
一斉抹消しない場合
首位打者を獲得したキャッチャーの森友哉が、クライマックスシリーズ直前に体調不良を訴え、第1戦の出場が難しくなったと仮定します。
体調不良とはいえ、このタイミングで森を登録抹消するわけにはいきません。
なぜなら、このタイミングで登録抹消すると10日間は一軍再登録が出来ませんので、クライマックスシリーズを丸々棒に振ることになるのです。
第2戦以降、森を出場させたい場合は、どうしても第1戦は体調不良の森を一軍に置いておく必要があります。
貴重な28人の一軍枠がひとつ潰れてしまうわけですね。
さらに、捕手のように複数名一軍に置いておく必要があるポジションだと、森の代わりに捕手を一軍に上げることになりますが、これに押し出されて一軍登録を抹消された選手はクライマックスシリーズ出場のチャンスが無くなるのです。
森の体調不良を受けて岡田がスタメン、第1戦の控え捕手として駒月が一軍登録されるようなケースです。
この場合、駒月に代わって佐藤龍世が二軍に落ちたとすると、クライマックスシリーズ中は佐藤は一軍出場出来ません。
1日体調不良が出るだけで、これだけの影響が出てしまうのです。
一方、ペナントレース最終戦直後に全員を登録抹消していた場合、こうはなりません。
森がクライマックスシリーズ直前に体調不良を訴えたとすれば、森を登録しなければ良いのです。
森の代わりに捕手は岡田と駒月を登録しておき、第2戦から駒月と森を交代させれば良いというわけですね。
一軍登録枠を無駄遣いすることなく、フル活用が出来ています。
この仕組みが当てはまるのは優勝チームだけ
全選手抹消のメリットをご理解いただけましたでしょうか。
ペナントレース最終戦終了後、全選手を登録抹消すると、一軍登録枠をフル活用でき、ベストメンバーを選定することが出来ます。
一方で、これは優勝チームだけに許された戦略なのです。
2位、3位のチームもクライマックスシリーズを控えているのは同様ですが、基本的にクライマックスシリーズ第1ステージはシーズン最終戦から10日以上間が空くことはありません。
仮に2位チームが全選手を抹消してしまうと、クライマックスシリーズ第1ステージで誰も一軍登録出来ない悲惨な事態となります。
優勝チームだけに許された特権というわけですね。
フリーエージェント制度では選手の一軍登録期間が重要となりますが、この一斉抹消されている期間については特例として一軍登録期間に参入されます。