プロ野球では、勝ち試合で登板するリリーフ陣を「勝利の方程式」と表現することがあります。
当記事では、この勝利の方程式の意味や由来、歴代の事例について紹介します。
筆者のプロフィール
野球観戦歴20年超の野球オタクで、元球場職員の経歴を持ちます。
愛読書は公認野球規則で、野球のルール解説も得意としています。
【用語定義】勝利の方程式とは?
プロ野球における勝利の方程式とは、チームにとっての最善の継投策を指しています。
リード時にリードを守り切るのが勝利の方程式の役割です。
勝利の方程式とは?
- リード時に登板するパターン化された複数のリリーフ投手のこと
- 成績優秀なリリーフ投手で、チームの必勝パターンとなっている
- 2名~4名で1イニングずつ割り当てられるケースが多い
- 試合終盤の7回以降に登板することが多い
7,8回のセットアッパー、9回のクローザーを固定できたチームがこのリリーフ陣を総称して勝利の方程式と呼ぶわけですね。
「勝利の方程式」の呼び方の由来
はじめて「勝利の方程式」の単語が使用されたのは1993年頃と言われています。
当時の巨人・長嶋監督が「橋本・石毛」の継投策を「勝利の方程式」と表現したのが始まりとする説が一般的です。
ただ、先発完投型が主流の昭和~平成前半のプロ野球ではリリーフ陣に注目が集まることは少なかったのも事実です。
「勝利の方程式」が本格的にプロ野球に普及したのは阪神タイガースのJFKがきっかけと考えられています。
「方程式」は日本語的には誤り・・?
本来方程式とは、X等の値を求める問題のことです。
未知の値を含む等式で、中学校で習いますよね。
「勝利の方程式」は未知どころか、固定のパターンを表す用語ですので、日本語的には誤りだという指摘も存在します。
正確な言葉を使うなら「勝利の等式」「勝利の公式」「勝利の定理」といったところでしょうか。「勝利の方程式」に慣れすぎてしっくりこないですね(笑)
歴代の有名な「勝利の方程式」
以下では、歴代の主な勝利の方程式をご紹介します。
「勝利の方程式」の構築は近年では当たり前になりつつありますが、ここでは特別な愛称が名づけられ、チームの勝利に大きく貢献した方程式をご紹介します。
JFK(阪神タイガース)
勝利の方程式の構築が一般化したきっかけといっても過言ではないのが阪神タイガースのJFKです。最も有名な勝利の方程式と言えるでしょう。
2005年~2007年にかけてフル回転し、阪神の2005年リーグ優勝にも貢献しました。
以下のとおり3名の頭文字を取って命名されています。(スポーツ紙記者により命名)
- J・・ジェフ・ウィリアムス(主に8回)
- F・・藤川球児(主に7回)
- K・・久保田智之(主に9回)
※2007年は「7回久保田 – 8回ウィリアムス – 9回藤川」の順番に登板
- ジェフ・ウィリアムス
05年 75登板 防2.11 3勝 3敗 37H
06年 47登板 防1.90 3勝 2敗 26H
07年 60登板 防0.96 1勝 2敗 42H - 藤川球児
05年 80登板 防1.36 7勝 1敗 46H
06年 63登板 防0.68 5勝 0敗 30H
07年 71登板 防1.63 5勝 5敗 46S - 久保田智之
05年 68登板 防2.12 5勝 4敗 27S
06年 47登板 防3.96 5勝 7敗 16S
07年 90登板 防1.75 9勝 3敗 46H
このレベルの投手なら1名いるだけでも心強いのに、3名は異次元の強さですね。
当時の阪神は6回までにリードしていれば勝率9割という驚きの成績を残しました。
YFK(千葉ロッテマリーンズ)
2005年の千葉ロッテマリーンズ日本一に大きく貢献したのがYFKです。
阪神のJFKに追随する形で名づけられ、大車輪の活躍を見せました。
- Y : 薮田安彦
51登板 防3.07 7勝 4敗 19H 2S - F : 藤田宗一
45登板 防2.56 1勝 4敗 24H - K:小林雅英
46登板 防2.68 2勝 2敗 29S
2005年のセ・リーグ王者阪神とともに、勝利の方程式の重要性を世間に知らしめたリリーフ陣と言えるでしょう。
SBM48(福岡ソフトバンクホークス)
2010年のホークスリーグ優勝に大きく貢献したのがSBM48です。
摂津、ブライアン・ファルケンボーグ、馬原の3名の頭文字SBMに、甲藤の背番号48を組み合わせた4名の勝利の方程式です。
SBMは「ソフトバンクモバイル」と掛けられています。また、当時はAKB48等48グループの全盛であり、その流れも汲んでいます。
- 攝津正(7回)
71登板 防2.30 4勝 3敗 38H 1S - B.ファルケンボーグ(8回)
60登板 防1.02 3勝 2敗 39H 1S - 馬原孝浩(9回)
53登板 防1.63 5勝 2敗 2H 32S - 甲藤啓介(6回)
65登板 防2.96 2勝 0敗 15H
先発投手は5回まで投げ切れば安心して後ろに任せられるので、4名体制の勝利の方程式は心強いですね。
ROB(東京ヤクルトスワローズ)
助っ人外国人3名で構成されたのが、2015年東京ヤクルトスワローズのROBです。
ヤクルトのリーグ優勝に大きく貢献しています。
ROBは英語で「強奪する」という意味を持っており、「勝利を強奪」の意味が込められています。
- O.ロマン
61登板 防2.40 5勝 5敗 23H - L.オンドルセク
72登板 防2.05 5勝 2敗 33H - T.バーネット
59登板 防1.29 3勝 1敗 6H 41S
勝利の方程式の理解が深まれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。