2018年からプロ野球にリクエスト制度が導入されました。
当記事では、日本プロ野球におけるビデオ判定、リクエスト制度について徹底分析します。
- リクエスト制度のルール
- リクエスト制度における特徴的な事例
- 日本プロ野球におけるリクエスト制度の課題
野球観戦歴20年超の野球オタクで、元球場職員の経歴を持ちます。
愛読書は公認野球規則で、野球のルール解説も得意としています。
リクエスト制度とは?
リクエスト制度とは、審判の判定に異議を唱え、ビデオ判定を要求できる制度です。
メジャーリーグでも2014年から「チャレンジ制度」として導入されており、日本プロ野球もメジャーリーグに追随する形で導入されました。
リクエスト制度のルール
まずはリクエスト制度のルールを整理してみましょう。
- リクエスト権利は1試合で2回まで
- リクエストが成功した場合、リクエスト権利は減らない
- 延長戦の場合、リクエスト権が1回付与される
- 対象プレーが決められている
リクエストの権利は各球団の監督が保有しており、選手自身が審判にリクエストを要求することはできません。
ただ最近ではリクエスト制度が定着したため、際どいプレーに対して選手がベンチに向かってモニターのジェスチャーでアピールする場面が良くみられるようになりました。
リクエスト制度の対象となるプレー
リクエスト制度の対象のプレー、対象外のプレーは以下の通りです。
- ホームランなどのファール/フェアの判定
- 各塁上でのアウト/セーフの判定
- コリジョン(体当たり・ブロック)や併殺崩しなどの危険なプレー
- 危険球の判定
- ストライク/ボール/ハーフスイング/自打球の判定
- 走塁妨害、守備妨害の判定
- 塁審よりも前方の打球への判定
上記では主な例を挙げていますが、基本的に投球動作・打席に関する判定はリクエスト制度の対象外となっています。(危険球は対象です)
また、対象外のプレーで特筆すべきは「塁審よりも前方の打球への判定」です。
「前方」という定義が曖昧ですが、塁審よりもグラウンドの内側と考えると良いでしょう。
主にワンバウンドしたか否か、といったプレーが対象となりますが、過去、ワンバウンドを争う抗議に対して、「塁審よりも前方の打球」であることを理由としてリクエストを受け付けなかった事例も存在します。
このように、リクエスト制度は回数が定められているのに加え、対象プレーも制限されているのですね。
初めてリクエストが行われた事例
リクエスト制度の初事例は2018年3月30日の東京ドームでの開幕戦です。
巨人VS阪神で長野選手のポール際の大ファールに対して、「ホームランではないか」ということでリクエストが要求されました。
結果は覆ることなくファールとなりましたが、記念すべき第一号のリクエストとなりました。
第一号リクエストは巨人・高橋由伸監督でした。
なお、リクエスト初成功は同日に1塁のアウトセーフをめぐる判定でリクエストを要求したrロッテ・井口監督です。
リクエスト制度上の誤審
リクエスト制度においても残念ながら、誤審は生まれています。
審判自身も認めている有名な事例が、2018年6月22日のオリックスVSソフトバンクでの1シーンです。
延長戦の接戦の中、ソフトバンク中村晃選手がポール際に大ファール。
一度はファールと判定されるものの、ソフトバンク工藤監督がリクエストを要求します。
ビデオ判定の結果、判定は覆りホームランとなり、そのままソフトバンクが勝利します。
※この試合のハイライトはこちら↓
よくよく確認するとビデオには明確にファールである映像が残っており、オリックス福良監督は試合終了後に抗議します。
結果的に審判も誤審を認める結果となりました。
延長戦の接戦の中で試合結果に直結する、残念な誤審ですね。
リクエスト制度の観客の反応
リクエストが要求された場合、審判が見ている映像と同じものが球場のスクリーンに映し出されます。
映し出された映像に観客は一喜一憂し、プロ野球の中の一つの楽しみとなっています。
判定が覆った場合スタンドは大いに湧きますので、通常の判定でアウトになるよりもリクエストの結果アウトになる方が盛り上がりは大きいです。
そのため、リクエストは試合の流れに影響することも多く、重要な意味を持っています。
リクエスト制度の課題
リクエスト制度の一番の課題はビデオの精度でしょう。
メジャーリーグではビデオ判定のために球場には30ほどのカメラが設置されています。
一方で、日本のプロ野球ではTV中継用の映像を流用しているに過ぎないので、数台のカメラの映像に頼ることになっています。
その結果、映像が不鮮明であったり、見たいアングルの映像が無いなど、ビデオを見ても判定が難しいケースがしばしばあります。
こういった中で、先述のような誤審も生まれてしまうのですね。
日本プロ野球の資金力ではカメラの台数を増やすことは難しいかもしれませんが、ビデオの精度、数を上げていただき、ビデオ判定が確実なものになれば、より面白くなりそうですね。