近年、野球界で注目を集めているセイバーメトリクス。
野球に統計学を持ち込み、データを使って選手評価や戦略立てを行う手法です。
最近は聞きなれない野球指標を目にすることも増えたのではないでしょうか。
当記事では、先発投手の指標QS(クオリティ・スタート)について解説します。
野球観戦歴20年超の野球オタクで、元球場職員の経歴を持ちます。
愛読書は公認野球規則で、野球のルール解説も得意としています。
QS・HQSとは?
QSとはクオリティ・スタートの略で、先発投手を評価する指標として使用されます。
また、HQS(ハイクオリティ・スタート)と呼ばれる指標も存在します。
QS・HQSの達成条件
QS・HQSが記録される条件は以下の通りです。
- QS・・先発投手が6イニング以上を投げ、かつ自責点を3失点以内に抑える
- HQS・・先発投手が7イニング以上を投げ、かつ自責点を2失点以内に抑える
また、QSを評価する際にはQS率と合わせて評価されるのが一般的です。
QS率 = QS ÷ 先発登板数
QSの使用方法・成績の見方
先発投手が好投するとQS・HQSが記録されますので、QSは多ければ多いほど良い、と言うことができます。
特にQS率は先発投手としての安定感を示す数値となりますので、この数値が高いほど安定した先発投手であると評価することが出来ます。
なお、2013年の田中将大は24勝無敗という驚異的な成績をたたき出しています。
この年のQS率は100%(27試合27QS)と、決して打線の援護に恵まれただけでなく、しっかりと安定した投球を続けて得た記録だということが分かりますね。
近年、QS・HQSを重視する傾向に
近年、QS・HQSの注目度は上がり続けています。
先発投手を評価するにあたって欠かせない指標と言っても過言ではありません。
従来、先発投手を評価するにあたっては「勝利数」や「完投数」が重視されていました。これは沢村賞の受賞基準を見ても明らかです。
<沢村賞の選考基準>
- 登板試合数 – 25試合以上
- 完投試合数 – 10試合以上
- 勝利数 – 15勝以上
- 勝率 – 6割以上
- 投球回数 – 200イニング以上
- 奪三振 – 150個以上
- 防御率 – 2.50以下
※必ずしも7項目全てクリアしなければならない規定はありません。
しかしながら、「勝利数」は打線や相手投手など、自分自身の能力以外に左右される要素が多いという欠点がありました。
極端な話、5回5失点でも味方打線が6点取れば勝利数は得られるのです。また、9回1失点に抑えたとしても、味方打線が完封されてしまうと勝利投手どころか敗戦投手になってしまいます。
完投数も現代野球では重視されない指標となってきています。
現代野球では先発投手、セットアッパー、守護神と投手の分業制が進んでおり、先発投手には9回を投げぬくことよりも6~7回を安定して投げ続け、先発ローテーションを守ることが求められます。
このような背景を受け、注目を浴びたのがQS・HQSです。
QSは6回を3失点以内に抑えたか、という点のみで評価されますので、相手投手や打線の影響を受けることはありません。選手自身の能力を評価できる指標となるわけです。
また、QSが6回、HQSが7回を目安としていることも、分業制が進んだ時代に合致した考え方と言えます。
こういった背景を受けて、先発投手を評価する際にQS・HQSは欠かせない指標となっています。
QSまとめ
2019年時点では、QSは日本プロ野球では公式記録としては記録されていません。
しかしながらメジャーリーグ等海外のリーグでは公式記録として記録されるケースが増えてきており、日本でもスポーツ誌等では頻繁に目にするようになってきています。
現代野球にマッチした指標であることは間違いありませんので、是非QSに注目して野球を観戦してみてくださいね。