当記事では、野球におけるセイバーメトリクスの基礎について解説します。
セイバーメトリクスはデータ野球が活発化してくる中で注目度が高まっています。
当記事をご覧いただき、さらに野球を楽しんでいただければ幸いです。
筆者のプロフィール
野球観戦歴20年超の野球オタクで、元球場職員の経歴を持ちます。
愛読書は公認野球規則で、野球のルール解説も得意としています。
セイバーメトリクスとは?
まずはセイバーメトリクスの用語の定義から整理しましょう。
セイバーメトリクスとは、野球をデータから分析する分析手法です。
アメリカ野球学会、SABR(Society for American Baseball Research)が語源となっています。
1970年頃から提唱されている手法ですが、近年、データの重要性が増してきている中で注目を集めています。
セイバーメトリクスが注目を集めた背景
そもそもセイバーメトリクスが注目を集めた背景はどこにあるのでしょうか。
ポイントは以下の2点です。
セイバーメトリクス注目の背景
- 旧来の分析指標には選手の能力を正しく評価できない問題があった
- セイバーメトリクスでは、選手の能力を計測することができる
順番に解説します。
旧来の分析指標の問題点
野球で選手を評価する指標といえば、打率や打点、勝利数、防御率などが思い浮かぶのではないでしょうか。
日本プロ野球においては、これらの成績で主に選手を評価しており、表彰も行われます。
ただ、これらの指標の重要性が低下してきているのです。
これらの旧来の指標は「本人の能力」を正確に測ることが出来ていないという問題点があるためです。
打点や勝利数が分かりやすい例です。
打点を多く記録するためには?
- 塁上にランナーがたまっている必要がある
- ⇒常にランナー無しなら、毎打席ツーベースを打っても打点はつかない
- ⇒打点は運や他打者などの要素に左右される
勝利数を多く記録するためには?
- 味方打線に援護を貰う必要がある
- ⇒無失点でも援護がゼロなら勝利は記録されない
- ⇒自分の投球内容だけでなく、援護や相手投手等の運の要素が大きい
要するに、運の要素や味方・相手との兼ね合いで左右される記録が多いのです。
もちろん、野球というスポーツ自体がチーム競技ですので、これが悪いこととは言いません。
ただ、メジャーリーグを中心に「選手本人の能力」を正確に測る動きが活発化してきたのも事実です。
セイバーメトリクスは「本人の能力」を計測可能
セイバーメトリクスでは、旧来の指標では明らかに出来なかった「選手の本当の貢献度」に注目しています。
簡単に計算できるものから、素人では計算できない複雑なものまで、様々な指標が存在します。
以下では、有名なセイバーメトリクス指標をご紹介します。
有名なセイバーメトリクス指標
ここでは、目にする機会の多い以下の指標についてご紹介します。
有名なセイバーメトリクス指標
- OPS
- UZR
- QS
- WHIP
- P/PA
- WAR
打者指標:OPS
On-base plus sluggingの頭文字を取ったOPSは打者を評価するための指標です。
読み方 | オプス、オーピーエス |
---|---|
使用目的 | 打者の能力測定 |
計算方法 | 出塁率+長打率 |
計算式がシンプルなので、使用されることの多い指標です。
.700あたりが並の打者とされ、.900を超えてくるとMVP級の活躍と評価されます。
守備指標:UZR
UZRは、守備能力を評価する指標です。
読み方 | アルティメット・ゾーン・レーティング |
---|---|
使用目的 | 守備能力の数値化 |
計算方法 | 「平均的な選手と比べて、守備でどれだけ貢献したか(失点を防いだか)」を評価 |
UZRの評価基準は以下のように考えられています。
評価 | UZR |
ゴールデングラブ級 | 15 |
優秀 | 10 |
平均以上 | 5 |
平均 | 0 |
平均以下 | -5 |
悪い | -10 |
非常に悪い | -15 |
記者投票で選出されるゴールデングラブ賞とUZRランキングが比較される場面も増えてきましたね。
先発投手指標:QS
先発投手に記録されるのがQSです。
読み方 | クオリティスタート、キューエス |
---|---|
使用目的 | 先発投手の安定感を測る |
計算方法 | 先発投手が6イニング以上を投げ、自責点を3点以内に抑えた時に記録される。 |
勝利投手よりも運の要素が少ないため、選手自身の能力をより正確に把握することが出来ます。
QS率(QS回数÷先発登板回数)と合わせて、先発投手の安定感を測る指標として注目されています。
また、7回2失点以内の場合に記録されるHQSも覚えておきたい指標です。
投手指標:WHIP
WHIPは、Walks plus Hits per Inning Pitchedの頭文字を取っています。
直訳すると「1イニングあたりの与四球・被安打数の合計」です。
読み方 | ウィップ |
---|---|
使用目的 | 投手の能力測定 |
計算方法 | (与四球数 + 被安打数) ÷ 投球回数 |
要するに、1イニングあたりに何人のランナーを出すか、ということですね。
1.00を下回ると、エース級の 働きと言えます。
WHIPはメジャーリーグでは公式記録として記録されており、投手能力を測る重要な指標と位置づけられています。
打者指標:P/PA
打者指標P/PA(Pitch per Plate Appearances)は打者の「粘り」を評価する指標です。
読み方 | オプス、オーピーエス |
---|---|
使用目的 | 打者の「粘り」を評価 |
計算方法 | 全被投球数 ÷ 打席数 |
1打席で何球の球数を投げさせるか、という指標です。
「粘り打ち」を評価する珍しい指標ですね。
打者の特性や打順適正を見るうえで有効な指標です。
総合指標:WAR
総合指標WARは、野球選手の勝利への貢献度を評価する指標です。
読み方 | ウォー |
---|---|
使用目的 | 同じポジションの代替可能な選手に比べて、どれだけの勝利数に貢献したか、ということを表す指標(総合指標) |
計算方法 | 打撃・走塁・守備・投球の全ての要素を組み合わせて算出 ※計算式は超複雑で、素人には不可能です |
WARを参照することで、真に勝利に貢献している選手を発見することができます。
WARの評価基準については、以下が目安です。
WAR | 評価 |
6.0以上 | MVP級 |
4.0以上 | 侍ジャパン級 |
2,0以上 | スタメン・レギュラー級 |
1.0以下 | 控え |
0未満 | 他選手で代替可能 |
セイバーメトリクス関連書籍 3選
セイバーメトリクスに興味を持った方に向けて、おすすめのセイバーメトリクス本を3冊ご紹介します。
ここでご紹介するのは以下の3冊です。
- セイバーメトリクス入門
- マネーボール
- セイバーメトリクスの落とし穴
セイバーメトリクス入門
おすすめのポイント
- セイバーメトリクスの入門書
- 初心者が基礎から学ぶのにぴったりの1冊
マネーボール
おすすめのポイント
- セイバーメトリクスの必読書
- メジャーリーグの貧乏球団アスレチックスをセイバーメトリクスを活用して強豪チームに作り上げたストーリー
セイバーメトリクスの落とし穴
おすすめのポイント
- 近年のセイバーメトリクス至上主義に疑問を投げかける1冊
- ある程度野球に詳しい人が、野球を見る目を踏まえるのにぴったりの1冊
セイバーメトリクス まとめ
ここまでの内容をまとめます。
- セイバーメトリクスとは、野球をデータから分析する
- 旧来の指標では明らかに出来なかった「選手の本当の貢献度」に注目
セイバーメトリクスを理解すると、野球観戦がさらに楽しくなるのは間違いなしです。
セイバーメトリクスの理解を深め、さらに野球沼にハマっていきましょう!