近年、野球界で注目を集めているセイバーメトリクス。
野球に統計学を持ち込み、データを使って選手評価や戦略立てを行う手法です。
最近は聞きなれない野球指標を目にすることも増えたのではないでしょうか。
当記事では、野球選手の総合指標WAR(ウォー)について解説します。
筆者のプロフィール
野球観戦歴20年超の野球オタクで、元球場職員の経歴を持ちます。
愛読書は公認野球規則で、野球のルール解説も得意としています。
WARとは?
WARは「ウォー」と読みます。
Wins Above Replacementの頭文字を取っており、直訳すると「代替可能選手を上回る勝利数」です。
つまり、同じポジションの代替可能な選手に比べて、どれだけの勝利数に貢献したか、ということを表す指標です。
代替可能選手とは?
平均以下の実力で、容易に獲得出来る選手を指しています。
他選手の平均値では無い点に注意です。
WARは総合指標というだけあり、打撃・走塁・守備・投球の全ての要素を組み合わせて算出されます。
WARの算出方法にはいくつかのアプローチが存在し、その内容は非常に複雑です。
ファンの目線では、WARについてはその数字の見方を覚えておけば十分だと言えます。
WARの見方・評価基準
WARは勝利数への貢献度を示しますので、その数字は大きければ大きいほど良い、ということになります。
逆に勝利数への貢献度が小さければ、WARの値も小さくなり、マイナスになることもあり得ます。
WARの評価基準については、以下が目安と考えられています。
WAR | 評価 |
6.0以上 | MVP級 |
4.0以上 | 侍ジャパン級 |
2,0以上 | スタメン・レギュラー級 |
1.0以下 | 控え |
0未満 | 他選手で代替可能 |
後述するWARランキングをご覧いただくと、各チームの主力選手はやはりWARも高いことが分かります。
一方、WAR0未満となると、他選手を連れてきたほうがマシ、という評価になります。
WAR0未満の選手は育成目的で試合出場しているケースなどが挙げられ、分かりやすい例では2019年の日ハム清宮が該当します(清宮のWARは-1.1)
多少試合で足を引っ張ることがあっても、将来性ある若手に経験を与える目的でスタメン起用すると、このようにWARは低くなる傾向があるのです。
2019年シーズンWARランキング
2019年シーズンのWARランキングをご覧ください。
パ・リーグ、セ・リーグそれぞれのトップ10をご紹介します。
なお、ここで紹介しているWARは以下の選手名鑑を参考にしています。
<2019年パ・リーグWARランキング>
順位 | 選手名 | チーム | メイン ポジション | WAR |
1 | 森 友哉 | 西武 | 捕手 | 6.9 |
2 | 外崎 修汰 | 西武 | 二塁手 | 6.1 |
3 | 吉田 正尚 | オリックス | 左翼手 | 6.0 |
4 | 浅村 栄斗 | 楽天 | 二塁手 | 5.7 |
5 | 千賀 滉大 | ソフトバンク | 先発投手 | 5.3 |
6 | 山本 由伸 | オリックス | 先発投手 | 5.2 |
7 | 秋山 翔吾 | 西武 | 中堅手 | 4.9 |
8 | 荻野 貴司 | ロッテ | 中堅手 | 4.8 |
9 | 山岡 泰輔 | オリックス | 先発投手 | 4.5 |
10 | 有原 航平 | 日ハム | 先発投手 | 4.4 |
<2019年セ・リーグWARランキング>
順位 | 選手名 | チーム | メイン ポジション | WAR |
1 | 鈴木 誠也 | 広島 | 右翼手 | 8.6 |
2 | 山田 哲人 | ヤクルト | 二塁手 | 8.0 |
3 | 坂本 勇人 | 巨人 | 遊撃手 | 7.3 |
4 | 山口 俊 | 巨人 | 先発投手 | 6.4 |
5 | 丸 佳浩 | 巨人 | 中堅手 | 6.0 |
6 | 今永 昇太 | DeNA | 先発投手 | 5.2 |
7 | ビシエド | 中日 | 一塁手 | 4.9 |
8 | 曾澤 翼 | 広島 | 捕手 | 4.2 |
9 | 青木 宣親 | ヤクルト | 中堅手 | 4.2 |
10 | 阿部 寿樹 | 中日 | 二塁手 | 4.2 |
2019年パ・リーグのMVPは森友哉、セ・リーグのMVPは坂本勇人です。
森友哉はWARランキングでもパ・リーグトップ、坂本は鈴木、山田に後れを取ったものの、MVPは優勝チームから選ばれることを踏まえると順当な受賞と言えるでしょう。
注目したいのが、パ・リーグWARランキング2位の外崎です。
森と同じく優勝チームの外崎は、WARだけ見るとMVP候補に名前が挙がっても不思議ではありません。
しかし実際のMVP投票では12位、西武選手の中でも8位となっており、MVP争いでは目立つことはありませんでした。
外崎は走攻守すべてがハイレベルの素晴らしい選手ですが、どうしても一芸に秀でたタイトルホルダー(山川や中村など)よりも印象が薄くなってしまうのです。
WARはあらゆる角度から選手を客観的に評価するので、外崎のように隠れたスーパースターを発掘する指標でもあるのです。
WARまとめ
ここまでの内容を箇条書きでまとめます。
- WARとは、同じポジションの代替可能な選手に比べて、どれだけの勝利数に貢献したか、ということを表す指標
- WARの数字は高ければ高いほど良い
- WARが6.0以上ならMVP級の活躍、0未満の選手は他選手が出場したほうが良いレベル
- WARを参照することで、真に勝利に貢献している選手を発見できる