当記事では、打撃指標OPS(オプス、オーピーエス)について解説します。
近年、日本でも注目が高まっているセイバーメトリクスの指標のひとつです。
テレビ中継でもOPSが表示されることも増えましたね。
野球初心者でもわかるように解説しますので、参考になれば嬉しいです。
野球観戦歴20年超の野球オタクで、元球場職員の経歴を持ちます。
愛読書は公認野球規則で、野球のルール解説も得意としています。
OPS(オプス、オーピーエス)とは?
OPSはオプス、オーピーエスと読みます。
打者の能力を評価する、打者評価指標として使用されています。
野球に統計学を持ち込み、データを使って選手評価や戦略立てを行うセイバーメトリクス指標のひとつですね。
計算方法と成績の見方を順にチェックしていきましょう。
OPSの計算方法
OPSの計算方法は非常にシンプルです。
OPSの計算式
OPS = 出塁率 + 長打率
出塁率が.300、長打率が.500という選手がいた場合、この選手のOPSは.800になるという訳ですね。
たくさん出塁して、長打をたくさん打てる選手ほどOPSは高くなります。
出塁率と長打率は日本プロ野球機構で公式に記録されている値で、以下のように定義されています。
出塁率 = (安打数+四球+死球)÷(打数+四球+死球+犠飛)
出塁率とは、打数、四球、死球、犠飛の合計数のうち、四球、死球、安打で出塁した割合を表します。犠飛のときは出塁ではないので出塁率は下がります。犠打も出塁ではないですが計算から除かれている為、出塁率は変わりません。また失策で出塁したときは、打数が1増えるだけなので出塁率は下がります。
(NPBホームページより)
長打率 = 塁打数÷打数
長打率とは、1打数あたりの塁打数の平均値を表します。塁打とは、「単打=1、二塁打=2、三塁打=3、本塁打=4」として計算します。1打数1安打1本塁打の選手は、塁打数の4を打数の1で割るので、長打率4.000となるわけです
(NPBホームページより)
なお、出塁率の最大値は1.00、長打率の最大値は4.00です。
そのため、OPSの最大値は5.00となります。
OPSの使用方法・成績の見方
計算式のとおり、OPSが高い打者はたくさん出塁し、長打も打てる打者ということになります。
要するに、点が取れる打者ですね。
OPSは得点能力との相関関係が強い指標なのです。
そのため、OPSは打者の得点能力を測る指標として用いられます。
では、OPSが高い打者とは具体的にどの程度の数値の打者を指すのでしょうか。
一般的に、OPSの数値は以下のように解釈されています。
ランク | 評価 | OPSの範囲 |
A | 素晴らしい | .9000以上 |
B | 非常に良い | .8334 – .8999 |
C | 良い | .7667 – .8333 |
D | 並 | .7000 – .7666 |
E | 平均以下 | .6334 – .6999 |
F | 悪い | .5667 – .6333 |
G | 非常に悪い | .5666以下 |
打率で3割という好打者の一つの目安があるように、OPSにも目安が設定されているのですね。
OPSの弱点
計算方法が簡単で、得点能力との相関関係も強いため、OPSは頻繁に使用されるようになって来ました。
しかし、このOPSにも弱点があります。
ここでは、以下の弱点について順番に解説します。
- 走塁や盗塁能力が考慮されていない
- 打者の特徴を把握するのが難しい
走塁や盗塁能力が考慮されていない
OPSは長打を大きく評価しすぎており、走塁能力や盗塁能力が考慮されていない点が弱点として指摘されます。
具体例を挙げて解説します。
- 選手A:4打数でツーベースを1本打った
- 選手B:4打数でシングルヒット1本、盗塁を決めた
この2選手であれば、どちらが得点能力が高いでしょうか。
ランナー2塁という状況を作り上げたという意味では、両者の得点への貢献度はほぼ同じと言えるでしょう。
2塁から本塁への走力を踏まえると、選手Bのほうがややリードしているとも言えるかもしれません。
では、選手A、BのOPSを計算してみましょう。
- 出塁率 = 1 ÷ 4 =.250
- 長打率 = 2 ÷ 4 =.500
- OPS = .250 + .500 = .750
- 出塁率 = 1 ÷ 4 =.250
- 長打率 = 1 ÷ 4 =.250
- OPS = .250 + .250 = .500
OPSを計算すると、大きく差が生まれてしまいました。
ツーベースを打った選手Aの方が、.250もリードしていますね。
このように、OPSは長打力に重きが置かれてしまっているため、長距離打者の数値が伸びやすく、瞬足巧打の打者の数値が伸びにくい傾向があります。
OPSを参照する時は、選手のタイプを考慮して見るのが良いでしょう。
打者の特徴を把握するのが難しい
出塁率や長打率が高い選手はOPSは高くなります。
ただしOPSの計算は足し算の結果なので、OPSだけでは選手の特徴が分からないというのは弱点です。
- 出塁率は高いが長打はない
- 長打はあるが出塁率は低い
このように真逆の選手であっても、OPSは同じということがあり得るのですね。
OPS単体ではなく、他の指標と組みあわせて評価することも重要です。
日本プロ野球におけるOPSの現状
OPS等のセイバーメトリクス指標はアメリカ・MLBで普及したのが始まりです。
少しずつ日本にも浸透してきている状況ですが、ここでは日本におけるOPSの現状について紹介します。
公式記録にはなっていない
日本・NPBでは現状、公式記録としてOPSは記録されていません。
NPBから公表されている成績一覧(こちら)においても、OPSの記載はありません。
出塁率と長打率は公表されているので、簡単に自分で計算はできます
公式記録ではありませんので、もちろん「最高OPS」のような表彰もありません。
MLBでは公式サイト上で、明確にOPSが公表されています(こちら)
打者スタッツ(成績)のページを開くと、最初はOPS順にランキングが表示されます。
MLBではそれくらい普及しており、重視されている指標なのです。
注目は高まっている
NPBの公式記録にはなっていないものの、野球関係者や野球ファンの間では知っていて当然の指標にはなってきました。
テレビ中継では打率と合わせてOPSが表示されることも増えました。
また、スポーツナビの提供する成績一覧(こちら)にも、OPSが表示されています。
OPSを目にする機会はかなり増えましたね
間違いなくOPSの重要度は高まっており、遠くない将来、打率よりも重視される数字になるかもしれません。
OPSの歴代ランキング
OPSの歴代ランキングをご紹介します。
時代を代表する打者の名前がずらりと並びます。
<シーズン成績ランキング>
順位 | 選手名 | 所属 | OPS | 記録年 |
1 | 王貞治 | 読売ジャイアンツ | 1.293 | 1974年 |
2 | ランディ・バース | 阪神タイガース | 1.258 | 1986年 |
3 | 王貞治 | 読売ジャイアンツ | 1.255 | 1973年 |
4 | 落合博満 | ロッテオリオンズ | 1.244 | 1985年 |
5 | ウラディミール・バレンティン | 東京ヤクルトスワローズ | 1.234 | 2013年 |
6 | 落合博満 | ロッテオリオンズ | 1.232 | 1986年 |
7 | アレックス・カブレラ | 西武ライオンズ | 1.223 | 2002年 |
8 | 王貞治 | 読売ジャイアンツ | 1.211 | 1967年 |
9 | 王貞治 | 読売ジャイアンツ | 1.21 | 1966年 |
10 | 王貞治 | 読売ジャイアンツ | 1.204 | 1976年 |
<通算成績ランキング>
順位 | 選手名 | OPS |
1 | 王貞治 | 1.08 |
2 | 松井秀喜 | 0.996 |
3 | アレックス・カブレラ | 0.993 |
4 | 落合博満 | 0.987 |
5 | タフィ・ローズ | 0.94 |
6 | 張本勲 | 0.9334 |
7 | 中西太 | 0.9325 |
8 | 小笠原道大 | 0.931 |
9 | 松中信彦 | 0.927 |
10 | ブーマー・ウェルズ | 0.9267 |
通算成績でOPSが1.000を超えているのは王貞治のみです。
いかにOPS1.000を維持するのが難しいかが分かりますね。
OPSまとめ
ここまでの内容をまとめます。
- OPSの計算式
⇒OPS = 出塁率 + 長打率 - OPSの弱点
⇒長打を大きく評価しすぎており、走塁能力や盗塁能力が考慮されていない - 通算NO1のOPSは王貞治の1.08
OPSは計算方法が簡単で、得点能力との相関関係も強いため、使用されることが増えてきています。
今後はOPSにも注目して選手成績を見て見ると、選手の貢献度がさらに深く見えてくるのではないでしょうか。
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