プロ野球の投手には「勝利投手/敗戦投手」が毎試合(引き分け試合を除く)記録されており、最も勝ち星を挙げた投手は最多勝として表彰されます。
当記事ではこの勝利投手について、以下の観点で解説します。
- 勝利投手の条件について、公認野球規則の規定と合わせて解説
- 勝利投手の条件について、テスト形式で理解度をチェック
野球用語を正しく理解し、野球観戦をさらに楽しみましょう!
野球観戦歴20年超の野球オタクで、元球場職員の経歴を持ちます。
愛読書は公認野球規則で、野球のルール解説も得意としています。
勝利投手とは?
勝利投手は、その試合を勝利に導いた投手1名に記録されます。
先発投手に記録されることが多く、日本では先発投手の評価に勝利数が重視されています。
特に2桁勝利(10勝)を達成した投手はエース級投手として扱われることも多く、多くの先発投手は勝利投手にこだわってプレーしています。
勝利投手は打線や相手投手との兼ね合いなど、投手自身の能力以外の面に左右されることも多いため、勝利投手ではなくQSなどの指標を用いて評価しようとする動きも進んでいます。
勝利投手の条件
それでは、勝利投手とはどのようにして決まるのでしょうか。
勝利投手については公認野球規則9.17で定められています。
勝利投手の条件のポイントは以下の通りです。
- 味方打線がリードを奪った直前にマウンドに立っていた投手が勝利投手
- 先発投手が勝利投手となるためには5回を投げ切ることが必要
- リリーフ投手が勝利投手となるためには投球内容も評価される
まずはこの勝利投手の条件について、公認野球規則の規定とあわせて確認しましょう。
勝利投手はリード直前にマウンドに上がっている投手
公認野球規則は若干堅苦しい日本語で書かれていますので、ここではひとつひとつ丁寧に解説していきます。
(a) ある投手の任務中、あるいは代打者または代走者と代わって退いた回に、自チームがリードを奪い、しかもそのリードが最後まで保たれた場合、その投手に勝投手の記録が与えられる。
公認野球規則9.17「勝投手・敗投手の決定」の冒頭に記載されている内容です。
味方打線がリードを奪った直前にマウンドに立っていた投手が勝利投手だ、ということを記載しています。
ただし、「そのリードが最後まで保たれた場合」と記載されているとおり、一度リードしてもその後相手チームに追いつかれてしまうと、勝利投手の権利は消滅してしまう点は注意です。
ここまでの内容が勝利投手を考える上での基礎の基礎となりますが、公認野球規則にはこの例外も規定されています。
例外規定を確認していきましょう。
勝利投手の例外規定
勝利投手の例外規定として、以下の内容が定められています。
(b) 先発投手は、次の回数を完了しなければ勝投手の記録は与えられない。
(1) 勝チームの守備が6回以上の試合では5回。
(2) 勝チームの守備が5回(6回未満)の試合では4回。
先発投手が本項を満たさないために救援投手に勝投手の記録が与えられる場合は、救援投手が1人だけであればその投手に、2人以上の救援投手が出場したのであれば、勝利をもたらすのに最も効果的な投球を行なったと記録員が判断した1人の救援投手に、勝投手の記録を与える。
先発投手で勝利投手となるためには、長いイニングを投げなさい、ということですね。
プロ野球は9回まで試合が行われますので、(1)の規定が適用され、先発投手は5回を投げ切ることが求められます。
仮に初回にリードを得た先発投手が3回で降板してしまうと、たとえそのリードを試合終了まで味方が守りきったとしても、先発投手に勝ちはつきません。
その後に好投したリリーフ投手に勝利投手が与えられることになります。
なお、先発投手が5回をもたずに降板した場合、どのリリーフ投手に勝利投手の権利を与えるのか、という判断基準については以下の通り注記が記載されています。
【原注】 救援投手が勝投手として記録されるには、その投手が最低1イニングを投球す るか、試合の流れ(スコアも含む)の中で試合を決定づけるアウトを奪うこと、というのが本項の趣旨である。最初の救援投手が効果的な投球をしたからといって、ただちに その投手に勝を与えるべきではない。なぜなら、勝投手は、最も効果的な投球をした投 手に与えられるものであり、続く救援投手が最も効果的な投球を行なうかもしれないか らである。どの救援投手に勝を与えるかを決定するには失点、自責点、得点させた走 者数、試合の流れを考慮しなければならない。もし2人以上の投手が同程度に効果的な 投球を行なった場合は、先に登板した投手に勝を与えるべきである。
リリーフ投手が運良く勝利投手となることがありますが、あくまでも勝利投手となるのは好投した投手ということですね。
先発投手の後にロングリリーフを見せた投手や、重要なピンチを切り抜けた投手が評価される傾向にあります。
リリーフ投手の勝利投手については、以下のようにも記載されています。
c) 救援投手が少しの間投げただけで、しかもその投球が効果的でなかったとき に、続いて登板した救援投手の中にリードを保つのに十分に効果的な投球をした 投手がいた場合は、前者に勝の記録を与えないで、続いて登板した救援投手の中 で最も効果的な投球をしたと記録員が判断した投手に勝を与える。
登板のタイミングは勝利投手と評価されやすい場面でも、投球内容によっては勝利投手の権利は与えられません。
なお、決定はあくまでも記録員の判断に委ねられています。
公認野球規則のポイントをおさらいしましょう。
- 味方打線がリードを奪った直前にマウンドに立っていた投手が勝利投手
- 先発投手が勝利投手となるためには5回を投げ切ることが必要
- リリーフ投手が勝利投手となるためには投球内容も評価される
【勝利投手条件テスト】どの投手が勝利投手?
ここまでの内容の理解度を、具体例を見ながら確認してみましょう。
以下、3つのパターンに正解できれば、勝利投手の条件はバッチリです。
パターン① 先発投手が好投して勝利
- チームAが5回裏に先制
- チームAの先発投手が7回無失点の好投
- そのままチームAが逃げ切り、勝利
→チームA先発投手が勝利投手
5回に先制した時点で、チームAは先発投手がマウンドに立っており、さらにそのままリードを守り切ってますので、そのまま先発投手が勝利投手となります。
割と良くある、簡単なパターンですね。
パターン② 先発が早期降板したが、勝利
- チームAが初回に5点先制
- チームA先発投手が3回4失点でリードは保ちつつも降板
- チームAリリーフ1が3回無失点のロングリリーフ
- その後もリリーフ2,3,4と継投を繋ぎチームAが逃げ切り勝利
→チームAリリーフ1が勝利投手
先制した時点でマウンドに立っているのは先発投手ですが、5回を投げ切ることが出来ず降板してしまいました。
この場合、先発投手には勝利投手の権利はありませんので、その後にロングリリーフで好投を見せたリリーフ1が勝利投手となります。
パターン③ リリーフが同点を許したが、その後勝利
- チームAが初回に1点先制
- チームA先発は7回無失点の好投で1点のリードを守りきり降板
- チームAリリーフ1が8回裏にに1失点し、同点に追いつかれる
- チームAが9回表に得点し、再度リード
- チームA守護神が9回裏を締め、試合に勝利
→リリーフ1が勝利投手
少し複雑なパターンですが、これも実際には良くあるパターンです。
チームAが先制した時点では先発投手に勝利投手の権利が発生しており、先発投手は7回無失点でリードを守っているので、勝利投手の権利を持ったまま降板しています。
しかし、8回裏に同点に追いつかれたことで勝利投手は一度リセットされ、先発投手の勝利投手の権利は消滅しています。
チームAは9回に再度リードしますが、このリードで勝利投手の権利は直前にマウンドに立っていたリリーフ1に発生します。
このままチームAが逃げ切ってますので、リリーフ1が勝利投手となります。
唯一失点したのがリリーフ1ですが、勝利投手に選出されるのですね。
敗戦投手の条件
敗戦投手の考え方は勝利投手よりシンプルです。
相手にリードを許した投手が敗戦投手となります。
(d) 自己の責任による失点が相手チームにリードを許し、相手チームが最後まで そのリードを保ったとき、その投手に敗投手の記録を与える。
【原注】 試合の途中どこででも同点になれば、敗投手の決定に関しては、そのときから 新たに試合が始まったものとして扱う。
勝利投手の条件 まとめ
ここまでの内容を箇条書きでまとめます。
- 勝利投手は公認野球規則で定められている
- 味方打線がリードを奪った直前にマウンドに立っていた投手が勝利投手
- 先発投手が勝利投手となるためには5回を投げ切ることが必要
- リリーフ投手が勝利投手となるためには投球内容も評価される
- 敗戦投手はリードを許した投手