本塁打王、打点王、首位打者を同時に獲得する打撃三冠王。
当記事では、この三冠王について達成条件を解説し、歴代達成者や令和の三冠王候補をご紹介します。
筆者のプロフィール
野球観戦歴20年超の野球オタクで、元球場職員の経歴を持ちます。
愛読書は公認野球規則で、野球のルール解説も得意としています。
【達成条件】プロ野球における三冠王とは?
三冠王とは
1シーズンで1人の打者が同時に本塁打王、打点王、首位打者を獲得すること
打撃タイトルを総なめにした、最強打者の称号です。
本塁打王、打点王、首位打者はどれか1つを取るだけでも普通なら一苦労ですので、これを総なめにするのは歴史に残る偉大な記録です。
- 本塁打王:シーズンで最も多く本塁打を打つ
- 打点王:シーズンで最も多く打点を稼ぐ
※関連記事:打点と得点とは?違いを簡単に解説! - 首位打者:シーズンで最も高い打率を記録する
セリーグ、パリーグそれぞれで打撃タイトルは選定されるため、1シーズンに最大2名が誕生する可能性があります。
実際に1985年、1986年は同時に2名の三冠王が誕生しています。
※パ・リーグ:ロッテ・落合
※セ・リーグ:阪神・バース
三冠王ってどれくらいすごい?
以下では、三冠王の歴代達成者を紹介しながら、その記録の偉大さを紹介します。
歴代達成者はたった7名(11回)
NPB(日本プロ野球機構)は歴代の記録達成者を公開しています。
歴代三冠王達成者は下表のとおりです。
選手名 | 球団 | 達成年度 | 打率 | 本塁打 | 打点 |
中島 治康 | 巨人 | 1938秋 | 0.361 | 10 | 38 |
野村 克也 | 南海 | 1965 | 0.320 | 42 | 110 |
王 貞治 | 巨人 | 1973 | 0.355 | 51 | 114 |
王 貞治 | 巨人 | 1974 | 0.332 | 49 | 107 |
落合 博満 | ロッテ | 1982 | 0.325 | 32 | 99 |
落合 博満 | ロッテ | 1985 | 0.367 | 52 | 146 |
落合 博満 | ロッテ | 1986 | 0.360 | 50 | 116 |
ブーマー | 阪急 | 1984 | 0.355 | 37 | 130 |
バース | 阪神 | 1985 | 0.350 | 54 | 134 |
バース | 阪神 | 1986 | 0.389 | 47 | 109 |
松中 信彦 | ダイエー | 2004 | 0.358 | 44 | 120 |
過去11度、三冠王は誕生しており、達成者は7名です。
最多達成者は落合博満氏で3度の三冠王に輝いています。
また、王貞治氏、バース氏も複数達成です(2度)
長いプロ野球の歴史の中でも、たったのこれだけしか達成されていない記録です。
いかに三冠王を獲得するのが難しいかが分かりますね。
平成の達成者は松中信彦だけ
平成の30年間で三冠王を獲得したのは、2004年の松中信彦のみです。
そのため、松中氏は「平成唯一の三冠王」と称されます。
30年でたった1人しか誕生しないほど、三冠王は珍しい記録なのです。
なお、松中の本塁打王はぎりぎりの獲得でした。
松中は本塁打を44本打っていますが、セギノール(当時日ハム)も44本打っていたため、トップタイで2名の本塁打王だったのです。
仮にセギノールがもう1本本塁打を打っていれば、松中は本塁打王、そして三冠王を逃すことになっていました。
三冠王の達成人数を他の大記録と比較
三冠王の達成者はたったの7名(11回)です。
これを他の大記録と比較してみましょう。
記録 | 達成人数 | 達成回数 | 最近の達成者 |
ノーヒットノーラン | 87人 | 98回 | ポンセ(日ハム):2022年 山本由伸(オリ):2022年 |
完全試合 | 16人 | 16回 | 佐々木朗(ロッテ):2022年 槇原(巨人):1994年 |
サイクルヒット | 71人 | 76回 | 塩見(ヤクルト):2021年 牧(DeNA):2021年 |
トリプルスリー | 10人 | 12回 | 山田(ヤクルト):2015,16,18年 柳田(ソフトバンク):2015年 |
2022年は佐々木朗希の完全試合が話題となりましたが、三冠王はそれ以上に珍しい記録です。
2015年には流行語大賞となった「トリプルスリー」も珍しい記録ですが、三冠王はトリプルスリーよりも達成者は少ないのです。
三冠王が難しい大きな理由が、それが相対的な記録だという点です。
つまり、他の選手の成績に左右されるのです。
たとえば、イチローと同年代の選手は首位打者を獲得するの非常に難しいですよね。
イチロー選手は2000年まで7年連続で首位打者を獲得しています。
1つのジャンルで突出した選手が存在する場合、打撃タイトルを総なめする三冠王は極めて難しくなるのです。
令和の三冠王は誕生するのか?
それでは、令和においては三冠王は誕生するのでしょうか。
この記事の更新時点(22年8月末)では、ヤクルトの村上宗隆が最有力候補となっています。
残り30試合を切ったシーズン終盤にもかかわらず、本塁打、打点、打率でトップを維持しています。(正確には安打数や出塁率、長打率やOPS等でもトップ)
2022年シーズンはノーヒットノーランが5度達成されるほどの「投高打低」のシーズンと言われています。
その中で村上は突出した打者成績を残しており、いよいよ松中以来の三冠王が現実味を帯びています。