野球豆知識

野手が投手?日本プロ野球における「野手登板」の事例

野手登板とは

当記事では、プロ野球における野手登板について解説します。

先発が早々にノックアウトされると、ファンからは「野手を投げさせろ!」という声が上がることがあります。

ただ実際には野手登板は日本では極めて珍しく、なかなか難しい問題です。

当記事が参考になれば嬉しいです。

【賛否あり】「野手登板」とは?

野手登板は言葉のとおり、本職は野手である選手が投手として登板することを指します。

MLBでは普及している戦術です。

野手登板の目的
  • 大差がついた試合で投手の体力を温存させる
  • 野手登板は抑えること以上にイニングを消化することが求められる

要するに敗戦処理が野手登板の目的というわけです。

合理的な戦術ではあるものの、日本ではまだまだファンサービス的な要素も強く、以下のような批判も集まっています。

野手登板への批判
  • 本職でない選手の登板は対戦相手やファンに失礼
  • 死球で怪我をさせるリスクがある
  • 不慣れな動作で野手登板する選手も怪我のリスクがある

特に「失礼だ」という意見はマウンドを「神聖な場所」と考える日本の文化に根付くものです。

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こうした批判もあり、日本では野手登板はめったに見られません

日本プロ野球における野手登板の事例

日本プロ野球における野手登板の事例は以下のとおりです。

選手名所属球団本職監督登板日主目的
広瀬叔功南海外野手野村克也1970年10月14日ファンサービス
高橋博士日本ハム内野手中西太1974年9月29日全ポジション出場
デストラーデ西武内野手東尾修1995年5月9日ファンサービス
五十嵐章人オリックス内野手仰木彬2000年6月3日全ポジション出場
増田大輝巨人内野手原辰徳2020年8月6日敗戦処理
北村拓己巨人内野手原辰徳2023年9月2日敗戦処理
【オールスター戦】
イチロー
オリックス外野手仰木彬1996年7月21日ファンサービス

※2リーグ制となった1950年以降の事例をまとめています。

ファンサービスや全ポジション出場が主な目的でしたが、直近の巨人の事例は敗戦処理を目的とした登板となっています。

野手登板を決断した監督には名監督が多いのも特徴です。

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野手登板は賛否両論なので、自分の判断に絶対的な自信がある監督しか決断できないのでしょう・・・

以下では、それぞれの事例について詳細に紹介します。

南海・広瀬叔功(1970年)

本職外野手
登板日1970年10月14日
対戦カード南海VS阪急
監督野村克也
登板シチュエーション1-7と6点ビハインドの6回から
結果2回無失点
登板目的ファンサービス
投手経験投手としてプロ入り
(肘の故障ですぐに野手転向)

南海・広瀬叔功は通算2,157安打、通算596盗塁の野球殿堂入りプレイヤーです。

外野手として活躍しましたが、野手登板も経験しています。

2イニング目には満塁のピンチを招くなどランナーは出しますが、無事無失点で切り抜けました。

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このときの監督は名将・野村監督です

野村監督は阪急には失礼なことをしたとしつつ、ファンサービスのためにやったと説明しています(次のピッチャーの準備が間に合っていなかったという事情もあったようです)

日本ハム・高橋博士(1974年)

本職内野手
登板日1974年9月29日
対戦カード日本ハムVS南海
監督中西太
登板シチュエーション0-9の9点ビハインドの9回から
結果打者1人をアウト
登板目的全ポジション出場
投手経験なし
(プロ入り前は捕手)

日本ハム・高橋の登板は消化試合となっていたシーズン最終戦(ダブルヘッダーの2試合目)でした。

消化試合ということもあり、名ユーティリティープレイヤーの高橋に白羽の矢が立ちます。

三原球団社長の発案で、1試合に高橋が全ポジションを守ることになったのです。

高橋は全ポジションを守ったあとに9回にマウンドにあがり、1アウトを取りました。

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1試合で全ポジションを守ったのは歴代でも高橋博士だけです。

西武・デストラーデ(1995年)

本職内野手
登板日1995年5月9日
対戦カード西武VSオリックス
監督東尾修
登板シチュエーション0-9の9点ビハインドの8回2死から
結果アウトを取れずに降板
登板目的ファンサービス
投手経験高校時代に投手経験あり

秋山幸二、清原和博と並んでAKD砲として西武の黄金時代を支えたデストラーデも野手登板を経験しています。

東尾監督がファンサービスのつもりで大量ビハインドの中で投入しました。

打者3人に対して三塁打、四球、四球とアウトを取ることはできませんでしたが、外国人選手の野手登板はデストラーデが唯一です。

オリックス・五十嵐章人(2000年)

本職内野手
登板日2000年6月3日
対戦カードオリックスVS近鉄
監督仰木彬
登板シチュエーション3-16の大量ビハインドの8回無死3塁
結果1イニング自責点0
登板目的全ポジション出場
投手経験高校時代は投手(3年時のみ)

投手が大炎上し、13点ビハインドという中で投入されたのがユーティリティープレイヤーの五十嵐でした。

五十嵐は過去に投手以外の全ポジションを守っており、それを知っていた仰木監督が記録達成を狙って起用したのです。

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五十嵐は全打順本塁打も達成した名選手です

全打順本塁打、全ポジション出場の達成者は歴代でも五十嵐章太だけという唯一無二の記録です。

ただこの試合は頭部死球による退場者も出ていた荒れた試合で、批判の声も多くあがりました。

近鉄の梨田監督は「アホらしい」とバッサリと切り捨て、五十嵐本人も「複雑です。相手に迷惑をかけた」とコメントを残しています。

巨人・増田大輝(2020年)

本職内野手
登板日2020年8月6日
対戦カード巨人VS阪神
監督原辰徳
登板シチュエーション0-11の大量ビハインドの8回1死
結果2/3イニングを無失点
登板目的敗戦処理
投手経験高校時代は投手

これまでの野手登板はファンサービスや記録達成の意味合いが強かったですが、この巨人・増田の登板は戦術的な起用です。

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敗戦処理だけを目的とした国内初の事例といえます

巨人は4点ビハインドの8回に若手の堀岡隼人を登板させましたが、1アウトを取るのが精いっぱいで7失点でKOされてしまいます。

この状況で原監督はチームの最善策として野手登板を選択したのです。(「あのまま堀を続投させることの方がはるかに失礼」といった趣旨のコメントも残しています)

巨人・北村拓己(2023年)

本職内野手
登板日2023年9月2日
対戦カード巨人VSDeNA
監督原辰徳
登板シチュエーション4-12の大量ビハインドの8回から
結果1回1失点
登板目的敗戦処理
投手経験なし
(中学時代にはあり)

2023年には原監督がふたたび戦術として野手登板を選択します。

先発の横川凱が1回で降板し、その後のリリーフ陣も打ち込まれたことで、残る投手が勝ちパターンの中川皓太とバルドナードのみとなってしまったのです。

敗戦処理として内野手の北村が登板しましたが、原監督は「北村が投手陣を助けてくれた」と感謝のコメントを残しています。

【番外編】オリックス・イチロー(1996年 ※オールスターゲーム)

本職外野手
登板日1996年7月21日
対戦カードオールスター第2試合
監督仰木彬
登板シチュエーション7-3でパ・リーグリードの9回2死
結果代打高津投手をショートゴロ
登板目的ファンサービス
投手経験高校時代は投手

有名な事例ですが、スーパースター・イチローはオールスターで登板しています。

高校時代はエースであったイチローをマウンドに上げる仰木監督の粋な計らいでした。

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打者・松井秀喜という痺れる場面での起用でした

のちにメジャーリーガーとして活躍する二人の対戦に注目が集まりましたが、結果的にはセ・リーグの野村監督は代打として投手の高津臣吾を送ります。

この起用について、のちに古田敦也が野村監督の意図を以下のように明かしています。

  • どうするか聞いたら松井は「どっちでもいい」と答えた
  • 本職じゃないイチローはデッドボールのリスクがある(なので、野村監督の率いるヤクルトの高津を代打に送った)
  • 松井が抑えられたら恥をかくことにもなる(なので、投手の高津を起用した)
  • そもそもオールスターは権威ある夢の祭典なのに、こんなことをやっていたら権威が下がる。オールスターは遊びではない。

ファンを楽しませようとした仰木監督と、オールスターの権威を大切に考えた野村監督、それぞれの名将の想いがあふれる場面だったのです。

【考察】日本プロ野球に野手登板は普及するか?

ここ数年の間に原監督が戦術として「野手登板」を選択していますが、これは日本プロ野球に普及するのでしょうか。

実際に野手登板はその都度話題になり、さまざまな意見が飛び交います。

ここでは、以下の観点で野手登板について考えてみます。

  • 野手登板は失礼?
  • 野手登板はファンサービスと言えるか?
  • 日本プロ野球の日程ではそもそも必要ない?

野手登板は失礼?

過去の野手登板の事例においても、監督や選手は「相手に失礼なことをした」といったニュアンスのコメントを残す傾向にあります。

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オールスターのイチローの登板は特に印象的です

野村監督が投手の高津をわざわざ代打に送ったことで、「野手登板=マナー違反」というイメージが決定的になった印象です。

実際に2000年のオリックス・五十嵐の登板時には、本職ではない投手との対戦を嫌った大村直之は大量リードの中であえてバントでその場をしのいでいます。

こうした過去の積み重ねから、野手登板は失礼というイメージが定着しているのでしょう。

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本職ではない野手登板は当然、デッドボールのリスクも高まります。

怪我をさけるために、打者は思い切って踏み込んでいけない(=本気で打ちにはいけない)という事情もあります。

打者が本気で対戦できない投手(野手)を投入するというのは、やはり失礼にあたるのかもしれません。

野手登板はファンサービスと言えるか?

大量ビハインドの場面では、「どうせだったら野手登板が見たい」というファンの声はしばしば目にします。

疲労がたまりがちなリリーフ陣の温存はもちろん、珍しい野手登板を見てみたいという心理でしょうか。

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温存と珍プレーの一石二鳥ですね

一方で野手登板は、ある意味「その試合を諦めた」というようにも映ります。

現地で声援を送ってくれるファンに対して、試合を捨てるような起用は失礼だという考え方もあるのです。

日本プロ野球の日程ではそもそも必要ない?

投手陣の温存が最大のメリットである野手登板ですが、そもそも日本には必要ないという意見もあります。

  • 日本はメジャーリーグよりも試合数が少ない
  • 日本は延長戦が最大12回まで
  • 日本はメジャーリーグに比べて一二軍の選手入れ替えが簡単

こうした事情から、日本はメジャーリーグほどは投手の疲労は蓄積しにくいのです。

わざわざ野手登板を選択しなくても、投手の疲労コントロールはできるというわけですね。

MLBでは野手登板が珍しくない理由

メジャーリーグでは多い年には年間100回以上の野手登板が見られます。

実際に日本人選手でもイチローや青木宣親は公式戦で野手登板を経験しています。

MLBで野手登板が珍しくない理由
  • 試合数が多い(MLBは年間162試合、NPBは143試合)
  • 延長戦は決着が着くまで無制限(NPBは12回まで)
  • ロースター枠(一軍登録枠)が少なく、マイナーとの入れ替えも回数制限がある

→こうした事情からリリーフの運用はシビアで、野手登板で余計な疲労をためないようにする戦術が誕生

ちなみにメジャーリーグでは野手登板は珍しい戦術でもないため、明確なルールも設けられています。

MLBのルール

野手は8点以上リードされているか、10点以上リードしている9回にしか登板してはいけない

ルールで定められた戦術であるため、今となっては堂々と使える戦術になっているというわけですね。

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