当記事では、2022年シーズンから導入された通称「大谷ルール」について解説します。
2023年には日本プロ野球にも導入されており、大谷翔平の偉大さを実感するルールです。
分かりやすさにこだわって解説しますので、参考になれば嬉しいです。
野球観戦歴20年超の野球オタクで、元球場職員の経歴を持ちます。
愛読書は公認野球規則で、野球のルール解説も得意としています。
「大谷ルール」の内容
まずは大谷ルールの内容を解説します。
公認野球規則の内容を紹介したうえで、従来の課題についても紹介します。
公認野球規則の内容
2023年に公認野球規則に記載された内容は、以下のとおりです(一部抜粋)
ポイントをまとめるので、読み飛ばしてもOKです
チームは投手に代わる打者を指名する義務はない。しかしながら、先発投手自身が打つ場合には、本条(a)項により、別々の2人として考えることができる。監督は自分のチームの打順表に10人のプレーヤーを記載し、このプレーヤーにおいて、一つは先発投手、もう一つは指名打者として2度、同じ名前を記載することになる。
もしこのプレーヤーが投手を退いたとしても、指名打者としては出場し続けることはできるが、再び投手として出場することはできない。また、このプレーヤーが指名打者を退けば、投手として出場し続けることはできるが、再び打者として打席に立つことはできない。
公認野球規則より引用
投手に代わる打者、というのが「DH」のことですね。
先発投手がDHを兼ねる場合、それは別々の2選手と考えることができる、と明記されたわけです。
わかりやすくまとめてみましょう
- 1人の選手が先発投手とDHを兼任することができる
- 兼任した場合、その選手は「投手」と「DH」で別の2選手として考える
- この選手が投手として降板しても、DHとしては出場を続けることができる
- この選手がDHを交代しても、投手としては出場を続けることができる
このルールにより、二刀流選手は「DH兼投手」として先発出場できるようになりました。
従来のルールの課題
従来は二刀流選手が投手として打席に立つためには、DHを解除して「投手」として出場するしかなかったのです。
DH解除には問題点もありました
- 投手として打席に立っていた二刀流選手が降板した場合、交代したリリーフ投手が打席に立つ必要がある。
- 二刀流選手が降板後に打席に立ちたい場合、外野など別の守備位置に回る必要がある
この課題が「大谷ルール」によって改善されたわけです。
「大谷ルール」はDH解除が必要ないため、二刀流選手が降板した後もDHとして打席に立つことができます。
「大谷ルール」は二刀流選手として最大限に活躍できるように考えられたルールなのですね。
正式名称が「大谷ルール」?
いたるところで「大谷ルール」と呼ばれているこのルールですが、正式名称は何なのでしょうか。
公認野球規則等のルールブック上では、特にルール名は明記されていません。
ルールブックの記載を借りるならば、「1人の選手が指名打者としても先発投手としても出場を可能にするルール」という形になるでしょうか・・・
長いし分かりにくいですよね・・
公式な名称はありませんが、このルールは現状、大谷のためのルールです。
そのため、メジャーリーグでも日本でも、わかりやすく「大谷ルール」と呼ばれています。
正式名称は「大谷ルール」と言い切ってしまっても問題ないでしょう。
「大谷ルール」導入により大谷は偉業達成
メジャーリーグでは2022年から大谷ルールが導入されました。
この恩恵を受けた大谷は、メジャーリーグ史上初の偉業を達成しています。
規定打席と規定投球回数を同一シーズンに達成したのです。
これはメジャーリーグの2リーグ制が始まった1901年以降では初めての偉大な記録でした。
大谷ルールによって出場機会が増えた効果は大きいでしょう
大谷ルールによって二刀流選手としてさらに活躍が期待されますね。
日本プロ野球における「大谷ルール」
大谷ルールはメジャーリーグで活躍する大谷翔平のためのルールですが、日本にも導入されています。
ここからは、日本プロ野球における「大谷ルール」について紹介します。
2023年ルールから公認野球規則に反映
2022年にメジャーリーグに導入された大谷ルールですが、日本には1年遅れで2023年から適用されています。
日本野球規則委員会より2023年度の野球規則改正が発表されました。
今年度の規則改正では、いわゆる「大谷ルール」といわれている1人の選手が指名打者としても先発投手としても出場を可能にした5.11(b)、正式試合となる前に打ち切られた試合でも条件によっては継続試合を可能とした7.02「サスペンデッドゲーム」の改正が行われています。
NPBニュースより引用
なお、2023年に実施されたWBCにおいても、大谷ルールは採用されました。
このおかげで、投手として出場した大谷は最後まで打席に立つことができたのです。
「大谷ルール」を適用する選手は現れるか?
現状、大谷ルールは大谷翔平のためのルールです。
日本プロ野球では、この大谷ルールを適用する選手は現れるのでしょうか。
日本プロ野球において、「二刀流選手」と話題になったことがあるのは主に以下の選手です。
- 上原健太(日本ハム)
- 矢澤宏太(日本ハム)
- 根尾昂(中日)
この中で上原は、2023年のオープン戦で初の大谷ルール適用選手として出場しています。
公式戦ではまだ適用された実績はありません
大谷ルールを適用して出場するためには、以下の能力が求められます。
- 先発投手として登板できる投手能力
- 他の選手をベンチに回してでも起用したい打撃力
要するに、野手としても投手としてもトップクラスの能力が必要なわけです。
正直、現在の日本にはここまでの二刀流選手はいないというのが現状でしょう。
今後、一種のパフォーマンスとして適用される選手は現れるかもしれませんが、大谷ほどの期待値を持って起用されるには大きな壁があります。
大谷翔平は、それほど偉大で異次元の選手なのです。