当記事では、MLBに2022年から導入されたピッチコムについて解説します。
当記事をご覧いただき、参考になれば嬉しいです。
野球観戦歴20年超の野球オタクで、元球場職員の経歴を持ちます。
愛読書は公認野球規則で、野球のルール解説も得意としています。
ピッチコムとは?
ピッチコムとは、サイン交換に使用される電子機器です。
This is the first usage of PitchCom electronic technology in an MLB game
— The Baseball Newsletter (@bbletter) April 7, 2022
A major blow to the sign-stealing industry pic.twitter.com/nVnRltUwlX
訳:これは、MLB の試合で PitchCom の電子技術が初めて使用されたものです。サイン盗み業界に大打撃
マイナーリーグでの試験利用を経て、2022年シーズンからメジャーリーグで導入されました。
2022年シーズンはピッチコムの利用は捕手から投手へのサイン伝達に限定されていました。
2023年シーズンでは、投手から捕手へのサイン伝達も解禁されています。
ピッチコムの仕組み
ピッチコムの仕組みは以下のとおりです。
- サイン伝達側は、ボタン操作でサインを発信する
- サイン受信側は、受信機から音声でサインを確認する
- データ送信は最小限のデータをデジタル送信するため、ハッキング(盗聴)は困難
ピッチコムはボタン入力と音声伝達の仕組みとなっています。
ピッチコムは以下の画像のように、複数のボタンだけが設置されたシンプルな作りです。
このボタンを押すことで、捕手(または投手)はサインを伝達します。
サインの受け手は受信機を持つことで、受信機から音声が出力されます。
ピッチコムの使い方
ピッチコムの使い方はシンプルです。以下の観点で解説します。
- サイン交換の操作方法
- 機器を装着する選手
- 機器を装着する場所
順番にご覧ください。
サイン交換の操作方法
野球には様々なサインが存在しますが、ピッチコムは投球のサイン交換に使用されます。
現在MLBでは、ボタンを2回押すことで球種・コースを伝達するのが主流となっています。
<例>
ストレート+外角高め
カーブ+外角低め
フォーク+内角低め
押されたボタンに応じて、受信機には球種とコースが音声で流れるわけです。
機器を装着する選手
ピッチコムを装着する選手は、現行のMLBルールでは以下のようになっています。
- ピッチコム(発信機)は捕手または投手だけが持つことができる
- 受信機は投手、捕手以外に最大3名の野手が持つことができる
2023年からは投手もピッチコムを持てるようになっています。
球種が多い投手等、捕手のサインに首を振る可能性が高い投手は自分で持つケースがあります(2023年開幕時点では、大谷翔平もピッチコムを操作しています)
また、野手も3名まで受信機を持つことが出来ます。
牽制等のサインプレーが多くなるセンターライン(セカンド、ショート、センター)の選手が持つことが一般的です。
機器を装着する場所
機器を装着する場所については決まりはありません。
受信機は音が聞こえなければ意味がありませんので、耳の近く、帽子の中等に仕込むのが主流です。
ピッチコム(発信機)は、選手がそれぞれ操作しやすい箇所に装着しています。
投手の場合は手首や腕に装着する選手が多いですが、捕手は膝に装着する選手も目立ちます。
大谷翔平は二の腕のあたり、それもユニフォームの下に装着していました。
ボタンを見ずに操作する必要があるため、話題となりました。
ピッチコムの導入目的
ピッチコムの導入目的は主に以下の2点です。
- 試合時間の短縮(サイン交換の効率化)
- サイン盗みの防止
それぞれ順番に解説します。
試合時間の短縮(サイン交換の効率化)
従来の手によるサイン交換は、試合時間が延びる一つの要因として問題視されていました。
特にランナーが二塁にいるタイミングでは、サイン盗みを警戒してフェイクの動きも入れるため、サインが複雑化していたのです。
このサイン交換を効率化するために導入されたのがピッチコムというわけです。
さらに2023年シーズンからはピッチクロックのルールが導入されました。
ピッチクロックのルール下では、投手は速やかな投球が求められます。
じっくりとサイン交換をしている余裕は無いため、もはやピッチコムは必須ツールとなっています。
サイン盗みの防止
ピッチコムを導入することで、サイン盗みも非常に困難なものになります。
2017年にワールドシリーズを制覇したアストロズが、サイン盗みで処分されたことは記憶に新しいですよね。
ピッチコムは盗聴も難しく、仕組み上サイン盗みを排除できると言えます。
日本プロ野球へのピッチコム導入の可能性
ピッチコムを利用しているメジャーリーガーからは、好意的な声が多く上がっています。
では、日本プロ野球に導入される予定はあるのでしょうか。
2023年時点では、日本ではピッチコムに関する具体的な議論は公表されていません。
当面はメジャーリーグの動向を様子見といったところでしょうか。
とはいえ、日本は基本的にメジャーリーグのルールを参考にしています。
ピッチコムの値段等、課題はありそうですが、遠くない将来、導入される可能性もあるかもしれませんね。