定期的に野球界で話題となってしまう問題が「サイン盗み」問題です。
サイン盗みの是非については野球界でも意見が分かれる難しい問題です。
当記事では、以下の観点でサイン盗みについて解説します。
当記事の内容
- そもそもサイン盗みとは
- サイン盗みの問題点を整理
→意見が分かれる難しい問題です - 過去のサイン盗み疑惑
→高校野球やプロ野球、MLBの事例をご紹介します。
筆者のプロフィール
野球観戦歴20年超の野球オタクで、元球場職員の経歴を持ちます。
愛読書は公認野球規則で、野球のルール解説も得意としています。
サイン盗みとは?
サイン盗みとは、相手チームのサインを盗み見て解読し、相手の作戦を味方に伝えることを指します。
捕手のサインを盗み見ることで球種を把握し、打者に伝達するケースが多いです。
サイン盗みの具体例
- 2塁ランナーが捕手のサインを盗み見て、球種やコースを打者に伝達する
→事前に決めたジェスチャーで伝達することが多いようです(ヘルメットを触ったらストレート、等) - 外野に仕掛けたカメラで捕手のサインを盗み見て、球団関係者がベンチや選手に伝達する
→スタンドからファンを装って伝達する等
→打者の体に隠し持った精密機器で伝達する等(電流がピリッとしたらストレート等)
あの手この手で相手のサインを盗もうとするわけですが、この「サイン盗み」は現在は禁止されています。
※高校野球では大会規則で「捕手のサインを見て打者にコースや球種を伝える行為を禁止する」と明記されています。
※プロ野球においても疑わしい行為があった場合は球団に対して注意が与えられます
この「サイン盗み」は、確かにフェアプレーとは言い難いものの、何が本質的な問題なのでしょうか。
以下では、このサインを盗み問題点を整理します。
サイン盗みの問題点
まず大前提として、サイン盗みは禁止されています。
ルールで禁止されている以上、現代の野球でサイン盗みは絶対にNGです。
「サイン盗みをしても良いですか?」と聞かれたら、「ルール違反だからNO」というのが第1の回答です。
では、そもそもなぜサイン盗みは禁止されているのでしょうか。
以下では、サイン盗みが禁止された背景にスコープを当てながら、サイン盗みを問題視する意見、サイン盗みを肯定する意見をご紹介します。
サイン盗みを問題視する意見
サイン盗みが試合に及ぼす影響としては、以下のようなものが考えられます。
- バッテリーVS打者の配球の読み合い等、野球の醍醐味が薄れる
- 野球というスポーツが「サイン盗み合戦」になってしまう
- サイン盗み対策でサインが複雑化することで、試合時間が延びる
野球という競技の特性上、配球や相手の作戦を読むということは、勝敗に直結します。
野球は「読み合い」「騙し合い」のスポーツと言われることもありますよね。
この野球でサイン盗みが常態化すると、野球の面白さが薄れてしまう訳です。
また、試合時間が延びるという目に見える実害もあり、サイン盗みは野球にとって問題だとされています。
サイン盗みを肯定する意見
サイン盗みは現状ではルール違反である一方、「サイン盗みも野球の醍醐味のひとつ」という意見も存在します。
1998年オフにサイン盗みの禁止規則が明文化されましたが、当時阪神監督だった野村克也氏は「サイン盗みも技術のひとつ」と禁止に反発しました。
「読み合い」「騙し合い」の野球において、「サイン盗み」も立派な情報戦なわけです。
現代の野球でも投手やバッターの癖、データを分析するのは当たり前の戦略です。
相手チームのサインを分析して選手に伝えることが、この癖やデータ分析と何が違うのかというわけですね。
現状はルール違反なのでサイン盗みは「悪」とされていますが、視点を変えればサイン盗みも野球の醍醐味のひとつと考えられたのかもしれません。
「サイン盗みOK」とルールが変わることはまずないと思いますが・・
プロ野球におけるサイン盗み対策
ルール上禁止されているサイン盗みですが、現在のプロ野球は「サイン盗みはあるかもしれない」という前提でプレーされています。
プロ野球のサインは本当に複雑ですよね・・
相手チームにサインを解読されないよう、サインに様々なダミーの動きを取り入れています。
また、試合の中でもサインのパターンを変えることもあるそうです。
サインの出し方については、以下の記事で紹介していますので、ぜひ合わせてご覧ください。
元千葉ロッテマリーンズ里崎氏がサインについて語っているオススメの動画も紹介しています。
過去のサイン盗み疑惑(一部事例)
過去、サイン盗みが話題となった事例をご紹介します。
サイン盗みの有無を証明するのは非常に難しく、あくまでも「話題となった」事例であることはご留意ください。
高校野球の事例
高校野球の事例としては、甲子園で話題となった3つの事例をご紹介します。
いずれも2塁ランナーの動きが問題視されたものですが、サイン盗み自体は否定されています。
2013年8月19日 花巻東VS鳴門戦
球審が花巻東に対して疑わしい行為(※)に注意を与えた。
※花巻東の攻撃中に二塁走者がバッターに対して、キャッチャーの構える位置を伝える仕草をした(ズボンをポンと触っていた)
2016年3月23日 秀岳館VS花咲徳栄
球審が秀岳館に対して疑わしい行為(※)に注意を与えた。
※花巻東の攻撃中に二塁走者がバッターに対して、キャッチャーの構える位置を伝える仕草をした(ユニフォームに触れる仕草)
2019年3月28日 星稜VS習志野
習志野側にサイン盗みの行為があったとして、星稜監督が猛抗議をした。
(審判団は疑わしい行為として認定はしなかった)
プロ野球の事例
プロ野球では2つの事例をご紹介します。
1998年 ダイエー
ダイエーの3選手が個人的に学生アルバイトを雇い、サイン盗みの伝達役をさせたとの疑惑が浮上。
外野に設置したカメラから捕手のサインを確認し、球団職員がサインを解読。解読した情報をスタンドの学生バイト経由で(メガホンを叩く仕草で)伝えたと報じられた。
球団は否定したものの、パ・リーグの特別調査委員会は「疑惑を完全には払拭できない」として、ダイエー球団社長らに職務停止の制裁を下した。
※この騒動以降、サイン盗み禁止が明文化された。
2021年7月6日 ヤクルトVS阪神
2塁ランナーの阪神近本が左手を上げるしぐさを取ったことに対して、ヤクルト村上が「サイン盗みではないか」と指摘。
阪神ベンチはこれを真っ向から否定し、怒号が飛び交う荒れた雰囲気となった。
「サイン盗みがあったとは思わないが、紛らわしい動きがあったことは事実」として、セ・リーグから阪神に対して注意が行われた。
MLBの事例
MLBでも複数の疑惑が存在しますが、中でも大騒動となったのが2017年のヒューストン・アストロズの事例です。(2019年発覚)
サイン盗みを行っていた事実を明らかにする証言が複数存在したうえ、2017年はアストロズはワールドシリーズ制覇を達成していたこともあり大問題となりました。
2017年 ヒューストン・アストロズ
2017年のアストロズがホーム試合でサイン盗みを行っていたことが、2019年オフに明らかとなった。
外野のカメラの映像から確認した相手のサインを分析し、分析結果をベンチからバッターへ伝達していた。(ゴミ箱を叩く回数で球種を伝えていた)
複数の証言からこの疑惑は事実と認定されており、球団は謝罪会見を開いている。
また、MLBは球団に対して罰金500万ドル、GMと監督のシーズン活動停止、20,21年のドラフト1巡目、2巡目の指名権剥奪の罰則も与えられている。
なお、2022年からMLBでは「ピッチコム」が導入されています。
これにより、サイン盗みが極めて困難になりました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
当記事を読んでいただき、サイン盗みの理解が深まれば幸いです。
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