プロ野球がオフシーズンに入ると、スポーツニュースは契約更改で盛り上がります。
活躍した選手が大幅昇給を勝ち取る一方で、残念ながら減額となる選手もいます。
中には「減額制限を超えた●%の減少」のようなニュースも目につきますよね。
減額制限なのに超えても良いの?と疑問に感じる方も多いのではないでしょうか。
当記事では、実際の野球協約を引用しながらプロ野球の減額制限について解説します。
野球観戦歴20年超の野球オタクで、元球場職員の経歴を持ちます。
愛読書は公認野球規則で、野球のルール解説も得意としています。
プロ野球の減額制限のルール
プロ野球選手は基本的に年間契約の年俸制で働いています。
この年俸の契約更改において、一定の減額を制限するルールが存在します。
「減額制限」と呼ばれる規定で、以下のとおり野球協約第92条で定められています。
次年度選手契約が締結される場合、選手のその年度の参稼報酬の金額から以下のパーセンテージを超えて減額されることはない。ただし、選手の同意があればこの限りではない。その年度の参稼報酬の金額とは統一契約書に明記された金額であって、出場選手追加参稼報酬又は試合分配金を含まない。
(1)選手のその年度の参稼報酬の金額が1億円を超えている場合、40パーセントまでとする。
野球協約第92条より引用
(2)選手のその年度の参稼報酬の金額が1億円以下の場合、25パーセントまでとする。
ポイントを抜粋すると以下のとおりです。
- 選手の年俸が1億円を超えている場合、40%まで
- 選手の年俸が1億円以下の場合、25%まで
- 選手の同意があればこの限りではない
「選手の同意があれば」ルール上は99%の減額もできてしまうのです。
減額制限を超えた場合の選手の選択肢
減額制限を超えた金額提示を受けた選手が取れる選択肢は以下の2択です。
- 球団の提示した金額に同意する
- 同意せず、自由契約となる(他球団に移籍できる)
選手に自由契約の権利があるという点は覚えておきたいポイントです。
球団は選手が出ていくことも覚悟して減額を提示しているのですね
ただ、大幅な減額を受ける選手は怪我や極度の成績不振のパターンが多いので、同意して残留するケースが多くなっています。
年俸調停
減額制限の範囲内の減額は、選手は自由契約を選択できません。
提示金額に不服がある場合は、選手はコミッショナーに対し報酬調停を求めることができます。
(要するに、第三者に調整してもらうわけですが、利用されることは極めて稀です)
意味がない!?減額制限の持つ意味
プロ野球では毎年のように減額制限を超えた提示がなされます。
大幅な減額を提示される選手は、一般的には以下のような特徴が挙げられます。
- 実績のある高額年俸選手(元が高いから大幅減もありうる)
- 直近シーズンは怪我や不調で思うような成績を残せていない
ベテラン選手が当てはまることの多い特徴ですが、故障持ちやピークを越えたベテラン選手にとって、自由契約はかなりのリスクです。(どこからも声がかからない恐怖もありますからね・・)
減額制限を受ける選手は立場が弱いといえます。
減額に同意せざるを得ない状況というわけです。
選手の足元を見た大幅減額が頻発する中で、「減額制限は何の意味もない」という批判もあります。
ただ、大幅な減額は多くの場合次の主力とは考えていないことも意味します。
出場機会を求めて他球団に移籍できる選択肢があるのは、選手にとっては救いではないでしょうか。
自由契約という選択肢が取れるという意味では、減額制限も無意味ではないでしょう。
年俸が減るだけでも辛いのに、出場機会も期待できないのはもっと辛いですからね・・
減額制限超えの結果自由契約となった事例
実際に減額制限超えの金額提示を受けて、自由契約(移籍)となった事例をご紹介します。
移籍まで踏み切るケースは、「出場機会を求める」「金額面以外にも(起用法等)納得できない点がある」といった場合が多いです。
年度 | 選手名 | 移籍球団 | 減額幅(金額は推定) |
2005年 | 小関竜也 | 西武→マイナー | 年俸9500万円から68%減の3000万円 |
2006年 | 中村紀洋 | オリックス→中日 | 2億円から60%減の8000万円 |
2008年 | 門倉健 | 巨人→韓国 | 7500万円から大幅減額 |
2011年 | 高橋信二 | 巨人→オリックス | 減額制限超えの大幅減額 |
2013年 | 井端弘和 | 中日→巨人 | 1億9000万円から80%以上減の3000万円前後 |
2014年 | 新井貴浩 | 阪神→広島 | 2億円から大幅減額 |
2015年 | 栗原健太 | 広島→楽天 | 3360万円から大幅減額 |
2015年 | 坂口智隆 | オリックス→ヤクルト | 7500万円から大幅減額 |
2015年 | 馬原孝浩 | オリックス→ソフトバンク | 減額制限超えの大幅減額 |
2018年 | 中島宏之 | オリックス→巨人 | 3億5000万円から大幅減額 |
2018年 | 金子千尋 | オリックス→日ハム | 6億円から83%減の1億円 |
2019年 | 嶋基宏 | 楽天→ヤクルト | 1億円から大幅減額 |
2021年 | 陽岱鋼 | 巨人→ | 減額制限超えの大幅減額 |
過去最大級の減額幅【5億ダウンや90%ダウンも】
過去最大級の減額幅は、90%減の当時巨人・杉内俊哉です。
年俸5億円から4億5000万円減の金額提示を2015年に受けています。
同年は故障で思うような成績を残せず、右股関節の大手術を受けていたため、この金額提示に同意しました。
なお、金額では2018年に当時オリックスの金子千尋が6億円から5億円減(83%減)の提示を受けています。
こちらは同意せず自由契約となり、日本ハムに移籍しています。
プロ野球の減額制限まとめ
生活がかかっている選手と、できるだけコストを抑えたい球団の間の契約は難しい問題です。
オフシーズンの契約更改の背景には、この減額制限のようなルールがあることも知っておくとニュースを見る目が深まりますね。
2022年には日本ハムが主力選手を自由契約にするノンテンダーが話題となりました。
こちらも合わせて覚えておきたい概念です。
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