めったに見れないプレーではありますが、野球には故意落球というルールが存在します。
めったに無いプレーであるからこそ、発生した場合はその場にいる選手、ファンを混乱させます。
当記事では、この故意落球のルールや制定目的、誤解されやすいインフィールドフライとの違いを解説します。
野球観戦歴20年超の野球オタクで、元球場職員の経歴を持ちます。
愛読書は公認野球規則で、野球のルール解説も得意としています。
故意落球のルール
故意落球のルールは、公認野球規則5.09a「打者アウト」の(12)で定められています。
まずは公認野球規則の規定を見てみましょう。規定そのものは読み飛ばしても構いません。
0アウトまたは1アウトで、走者一塁、一・二塁、一・三塁または一・二・三塁のとき、内野手がフェアの飛球またはライナーを故意に落とした場合。
ボールデッドとなって、走者の進塁は認められない。【規則説明】内野手が打球に触れないでこれを地上に落としたときには、打者はアウトにならない。ただし、インフィールドフライの規則が適用された場合は、この限りではない。
【注1】本項は、容易に捕球できるはずの飛球またはライナーを、内野手が地面に触れる前に片手または両手で現実にボールに触れて、故意に落とした場合に適用される。
公認野球規則5.09a(12)より引用
それでは、分かりやすく解説します。
まずは故意落球が宣告される条件です。
- 0アウトまたは1アウトである
- 走者一塁、一・二塁、一・三塁または一・二・三塁である
- 内野手がフェアの飛球またはライナーを故意に落とした場合
この規則は打者アウトの規定ですので、この故意落球に該当すると打者がアウトとなり、走者は元の塁に戻る必要があります。
要するに、ライナーやフライを直接捕球した場合と同じ状態となるのです。
また、故意落球が宣告された時点でボールデッド(タイムがかかった状態)になりますので、それ以上の進塁や、アウトを取ることはできません。
故意落球が宣告されないケース
ボールに触れずに落球した場合は、故意落球にはならない!
公認野球規則には、以下のような注記がされています。
【注1】本項は、容易に捕球できるはずの飛球またはライナーを、内野手が地面に触れる前に片手または両手で現実にボールに触れて、故意に落とした場合に適用される。
公認野球規則5.09a(12)より引用
ここでポイントとなるのが、地面に触れる前に片手または両手で現実にボールに触れてという記載です。
つまり、故意落球の対象となるのは、一度ボールに触れて落球したケースなのです。
フライに触れずに落球した場合は、それがたとえ故意の落球であっても、故意落球として打者がアウトになることはありません。
↓のような落球の仕方ですね。
なお、「容易に捕球できるはずの飛球またはライナーを」とルールにも記載されているとおり、きわどい打球に飛び込んだ結果の落球は、故意落球とはなりません。
故意落球のルール制定の目的
故意落球のルールは、本来1アウトのプレーが、落球することでダブルプレーとなることを防止するために制定されています。
たとえば、ノーアウト1塁の場面でセカンド正面にライナーが打たれたとします。
普通にプレーすれば、ライナーを捕球して1アウトです。
一方で、これを普通に捕球せず、わざとグラブではじき、落球した場合はどうでしょうか。
一見するとセカンドゴロですので、ダブルプレーを取ることが可能となります。
これを防ぐのが故意落球です。
本来、ライナーアウトなので、それはあくまで1アウトですよ、という訳ですね。
インフィールドフライとの違い
ここまでご覧いただいた野球に詳しい方の中には、「インフィールドフライと同じじゃないか」と思った方もいるのではないでしょうか。
たしかに、わざと落球してダブルプレーを防ぐという制定目的は同じです。
しかしながら、故意落球とインフィールドフライは公認野球規則上も別の項目であり、内容も明確に異なります。
故意落球とインフィールドフライの違いは、ざっと以下の表のとおりです。
故意落球 | インフィールドフライ |
---|---|
・アウトカウント:ノーアウト、または1アウト ・走者:一塁、一・二塁、一・三塁または満塁 | ・アウトカウント:ノーアウト、または1アウト ・走者:一塁二塁、満塁 |
バント、ライナーも対象 | バント、ライナーは対象外 |
落球した後で宣告 | 捕球前に宣告 |
宣告後はボールデッド | 宣告後はボールインプレー |
ひとつずつ解説します。
故意落球は走者一塁、一三塁の場面も対象となる
インフィールドフライが宣告されるのは、走者が一二塁、もしくは満塁の場面に限られています。
一方で、故意落球は走者が一塁に存在するケースはすべて宣告される可能性があります。
故意落球はライナーも対象のプレーとなっているため、打者走者でダブルプレーを取ることも可能となるため、ランナーが存在する場面はすべてルールの範囲とされているのです。
故意落球はバント、ライナーも対象
故意落球はバントによる打球や、ライナー性の打球も宣告の対象となります。
むしろ、故意落球が宣告されるのが最も多いのはライナー性の打球です。
インフィールドフライではバントやライナー性の打球は宣告対象外ですので、ここは大きな違いと言えます。
故意落球は落球した後で宣告
インフィールドフライは打球が打ち上げられた時点で宣告されますが、故意落球が宣告されるのはあくまでも落球した後となります。
インフィールドフライは実際に落球したかどうかは関係が無いため、頻繁に見られるプレーです。
故意落球は落球した場合に事後的に処理されるルールであるため、実際に見られるケースは少ないという訳ですね。
故意落球の宣告後はボールデッド
インフィールドフライでは、宣告後もボールインプレー状態であるため、守備のスキをついて次の塁に進塁することも可能です。
一方、故意落球が宣告されると、その時点でボールデッドとなりタイムがかかった状態になりますので、進塁や他のアウトを取ることは認められません。
ボールインプレーとボールデッドについては以下の記事で詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。
故意落球がプロ野球で宣告された事例
プロ野球の試合で故意落球が宣告された主な試合は以下のとおりです。
長いプロ野球の歴史の中でも、実際に宣告されることは珍しいというのが分かりますね。
いずれもライナー性の打球に対して、故意落球が宣告されています。
- 1970年5月9日 :中日VS巨人
- 2008年3月30日 :中日VS広島
- 2010年8月5日 :オリックスVS西武
- 2016年9月2日 :ロッテVS西武
- 2018年6月1日 :日本ハム対中日
- 2023年7月11日:巨人VS広島
当サイトでは、このような野球に関するルールを多数扱っています。
以下の記事では、中上級者向けの野球のルールを解説しています。
17問の野球のルールクイズもついてますので、野球の知識に自信のある方はぜひ試してみてくださいね。