「ルールブックの盲点というプレーを見たけれど、なぜ点が入るか分からない」
「そもそもルールブックの盲点って何?」
当記事では、こういった疑問を解決するためにルールブックの盲点の1点について分かりやすく解説します。
野球観戦歴20年超の野球オタクで、元球場職員の経歴を持ちます。
愛読書は公認野球規則で、野球のルール解説も得意としています。
ルールブックの盲点の1点とは?
そもそも、ルールブックの盲点の1点とはどういったプレーなのでしょうか。
ルールブックの盲点の1点は、漫画「ドカベン」の35巻で取り上げられたのが始まりです。
選手がルールを誤解していたために入った1点を指しています。
このルールブックの盲点の1点が2012年の高校野球、甲子園の舞台でも再現され話題となりました。
実際のプレーがこちらです↓
まずはプレーの内容を整理してみましょう。
1アウト1,3塁でショートライナーなのに、1点が入っていますね。
この済々黌VS鳴門の場面では、1アウト1,3塁でショートライナーでした。
ショートライナーの間に1塁ランナーが飛び出していたため、ショートは1塁に送球し、3アウトとなっています。
3アウトを取ったため、鳴門ナインはすぐにベンチに引き上げました。
しかしながら、スコアボードには1点が記録されています。
審判の説明によると、3アウト目(1塁ランナーのアウト)よりも先に、飛び出していた3塁ランナーが本塁を踏んでいたため、得点が認められたということです。
ライナーでダブルプレーになっているので、チェンジでは?
もそも、3塁ランナーはタッチアップもしていないのでは?
このように思う方も多いでしょう。
以下では、ポイントを整理しながらなぜこの1点が認められるのかを解説します。
ドカベンでは、1アウト満塁でスクイズの小フライが上がったシーンとして、同様のプレーが描かれています。
(飛び出した1塁ランナーをアウトにしている間に、3塁ランナーが生還し、得点が認められた)
ルールブックの盲点の1点のポイントとなるルールを解説
なぜルールブックの盲点の1点が認められるのか、を野球用語を用いて説明すると、以下のとおりになります。
- 飛び出した1,3塁のランナーをアウトにするのはアピールプレイ
- アピールプレイはタイムプレイ
- 3塁ランナーが本塁に到達している場合、3塁に送球し第3アウトの置き換えをアピールする必要があった。
野球のルールに詳しい方なら、これで理解できるかもしれませんが、そうでなければさっぱり分かりませんよね。
ひとつずつ、ポイントを整理しながら解説していきます。
- フォースプレイとアピールプレイの違い
- タイムプレイ
- 第4アウト(第3アウトの置き換え)
順番に解説していきましょう。
フォースプレイとアピールプレイの違い
野球でランナーをアウトにする方法は、大きく分けると以下の3点です。
- ランナーにタッチするタッチプレイ
- 進塁義務のある塁に送球するフォースプレイ
- ルール違反をアピールすることで成立するアピールプレイ
このルールブックの盲点の1点が混乱を招いている理由は、多くの方が「フォースプレイ」と「アピールプレイ」を混同しているためです。
フォースプレイとは、進塁義務が発生しており、次の塁に進む必要がある場合に成立するプレーです。
ランナー1塁の場面の内野ゴロで、2塁に送球することで1塁ランナーをアウトに出来るのは、1塁ランナーに2塁への進塁義務があるからですね。
※フォースプレイや進塁義務の詳細は、以下の記事で公認野球規則の条文を紹介しながら解説しています。
では、今回の済々黌VS鳴門の事例を振り返ってみましょう。
済々黌の1塁ランナーと3塁ランナーはショートライナーで飛び出してしまいましたが、これをアウトにするにはどうすれば良いのでしょうか。
1塁、もしくは3塁に送球すればアウトになるので、フォースプレイでしょ?
このように考える方は多いですが、実はこれが誤りなのです。
飛び出したランナーが元の塁に戻るのは、進塁義務ではなくリタッチの義務が発生しているためです。
進塁義務ならフォースプレイですが、リタッチの義務の場合アウトにするにはアピールプレイとなります。
リタッチの義務についてのアピールは、戻るべき塁に送球するだけで良いとされています。
見た目はフォースプレイと全く同じであるため、誤解されやすいプレーです。
※アピールプレイの詳細は、以下の記事で公認野球規則の条文を紹介しながら解説しています。
まずは、ルールブックの盲点の1点はアピールプレイであるという点を頭に入れたうえで、次のタイムプレイについて解説します。
タイムプレイ
野球の大原則に、タイムプレイと呼ばれるルールが存在します。
3アウトが取られる前にホームインしていれば、得点として認める、というルールです。
一方、これにはいくつかの例外が存在します。
第3アウトが、
- 打者走者が一塁に触れる前にアウトにされたとき。
- 走者がフォースアウトされたとき。
- 前位の走者が塁に触れ損ねてアウトにされたとき。
ここでポイントとなるのが、「②走者がフォースアウトされたとき」はタイムプレイとはならない点です。
つまり、フォースアウトより先に3塁ランナーがホームインしていても得点は認められません。
では、済々黌VS鳴門の事例はどうでしょうか。
1塁ランナーも3塁ランナーもショートライナーで飛び出していますが、これをアウトにするプレーはフォースプレイではなくアピールプレイでしたね。
そのため、この事例は例外には該当せず、タイムプレイとなります。
1塁ランナーが1塁でアピールアウトになるよりも、3塁ランナーの生還が早ければホームインが認められるのです。
第4アウト(第3アウトの置き換え)
タイムプレイでは、3アウト目よりも早く3塁ランナーがホームインしていれば、得点が認められるということはご理解いただけたと思います。
とはいえ、今回の済々黌VS鳴門の事例では、3塁ランナーはリタッチの義務を怠ってホームに突っ込んだだけなので、ルール違反であることには変わりはありません。
そのため、ルール上はこの得点を取り消す規定が存在します。
これが、第4アウト(第3アウトの置き換え)と呼ばれるルールです。
- 3アウト成立後、より有利になるアピールアウトが存在する場合には、追加でアピールアウトを主張することで、それを第3アウトにすることが出来る。
- 第3アウトの置き換えのアピールの権利は、守備側がグラウンド(ファールラインの内側)を出た時点で消滅する。
これを済々黌VS鳴門の事例に当てはめてみましょう。
この事例では、1塁ランナーをアウトにしたことで3アウトが成立しています。
しかしながら、その間に3塁ランナーは本塁に到達していたため、ホームインが認められていました。
ここでベンチに下がる前に第4アウト(第3アウトの置き換え)をアピールすれば、3塁ランナーを3アウト目とし、得点を取り消すことが出来るのです。
3塁ランナーはリタッチの義務を怠った状態でホームインしていますので、あくまでもアピールさえすればアウトになる、という訳ですね。
しかしながら、鳴門高校はこのルールに気づくことができず、歓喜の中全員がベンチに戻ってしまい、アピール権が消滅してしまったわけです。
ルールブックの盲点の1点をおさらい
ここまでご覧いただいた方は、ルールブックの盲点の1点について、かなり詳しく理解できたのではないでしょうか。
あらためて、おさらいしてみましょう。
- 飛び出した1,3塁のランナーをアウトにするのはアピールプレイ
- アピールプレイはタイムプレイ
- 3塁ランナーが本塁に到達している場合、3塁に送球し第3アウトの置き換えをアピールする必要があった。
こちらの解説は、冒頭で記載した解説を再掲載しています。
今なら理解できるのではないでしょうか。
ルールブックの盲点とは、「アピールプレイ」「タイムプレイ」「第3アウトの置き換え」という複数のルールが絡み合って生まれている、難しいプレーなのですね。
ルールブックの盲点の1点を防ぐ方法
それでは、ルールブックの盲点の1点を防ぐためには、守備側はどのように対応すれば良いのでしょうか。
それは、「最初から3塁ランナーでアウトを取る」か、「第3アウトの置き換えをアピールする」以外に方法はありません。
ライナーでダブルプレーを取ったときは、3塁ランナーが生還している可能性を頭に入れて、必要に応じて第3アウトの置き換えをアピールする必要があるのです。
ルールブックの盲点の1点まとめ
ルールブックの盲点の1点は、「アピールプレイ」「タイムプレイ」「第3アウトの置き換え」が組み合わさって生まれた1点です。
複雑なルールに見えますが、一つずつ理解すると単なる基本的なルールの積み重ねです。
済々黌の3塁ランナーは、のちのインタビューでこのルールブックの盲点の1点を「狙っていた」と語っています。(実際に他のシーンでもルールブックの盲点の1点を狙った動きを見せていました)
済々黌は、このルールを正しく理解していたことで、見事に1点をもぎ取ったという訳ですね。
なお、元祖・ルールブックの盲点の1点はドカベンの35巻で読むことが出来ます。
気になる方は、是非ドカベンものぞいてみてくださいね。
当サイトでは、このような野球に関するルールを多数扱っています。
以下の記事では、中上級者向けの野球のルールを解説しています。
17問の野球のルールクイズもついてますので、野球の知識に自信のある方はぜひ試してみてくださいね。