当記事では、野球におけるスクイズについて解説します。
スクイズは一見、地味なプレーです。
野球初心者には、バントとの違いも分からないのではないでしょうか。
スクイズは、一見地味ですが高リスクで奥の深いプレーです。
当記事を読むことで、スクイズのルールを理解いただき、その奥深さを実感していただければ幸いです。
筆者のプロフィール
野球観戦歴20年超の野球オタクで、元球場職員の経歴を持ちます。
愛読書は公認野球規則で、野球のルール解説も得意としています。
スクイズとは?
スクイズとは「spueeze(搾り取る)」が語源で、バントで1点をもぎ取る作戦を指しています。
※このようなプレーですね↓
スクイズのポイントは以下のとおりです。
スクイズとは・・
- ランナーを3塁に置いた場面で、1点をもぎ取りにいく作戦
- バッターがバントで打球を転がす間に、ランナーがホームに生還することを狙う
- 1アウトまたはノーアウトであることが条件
(2アウトでバントをしても、打者アウトでチェンジとなるので無意味)
スクイズのメリット
- 打率の低い打者でも得点が期待できる
- ヒットを打つよりもバントで打球を転がす方が一般的には簡単
(=ヒットを打つよりも確率が高い)
スクイズのデメリット
- 相手にスクイズを読まれた場合、3塁ランナーがアウトになる可能性が高い
(バントが届かない場所にボールを外される等) - 失敗した場合、攻撃の流れが途切れてしまう
1点をもぎ取る作戦ですが、最悪の場合3塁ランナーを失うことになります。
スクイズはハイリスクな戦略とも言えます。
スクイズとバントの違い
スクイズとバントの違いは何なのでしょうか。
打者の動きだけ見ていると、ただのバントのように見えますよね
あえて分かりづらく説明すると、スクイズはバントですが、バントはスクイズではありません。
正しく解説すると以下のとおりです。
バントとは
- 打者がバットを振らず、ボールに軽く当てて内野にゴロを転がす打ち方
- 例①:1塁ランナーや2塁ランナーを進塁させる送りバント
- 例②:自分自身が出塁を試みるセーフティーバント
スクイズとは
- バントのうち、ランナーを3塁に置いた場面で、1点をもぎ取りにいく作戦
要するに、スクイズもバントの1種なのです。
ランナー3塁で得点を奪いにいくバントに限って、スクイズと呼ぶわけですね。
スクイズの種類
一言に「スクイズ」と言っても、いくつかの種類が存在します。
ここでは、以下の3種類のスクイズについて動画とセットでご紹介します。
- スーサイドスクイズ
- セーフティースクイズ
- ツーランスクイズ
スーサイドスクイズ
一般的に「スクイズ」はこのスーサイドスクイズを指しています。
スーサイドスクイズでは、ピッチャーが投球動作に入ると同時に三塁ランナーがスタートを切ります。
バッターが空振りやフライの結果となると、高確率で三塁ランナーもアウトになる高リスクな作戦です。
リスクが高い分、バッターは転がしさえすれば得点が入りやすいメリットもあります。
以下の動画がスーサイドスクイズです。(ビヤヌエバのスタートが早すぎて笑えます。)
ぜひ合わせてご覧ください。
セーフティースクイズ
セーフティースクイズは、バントの打球が転がったことを確認した上で三塁ランナーがスタートします。
スーサイドスクイズと比較すると、以下のような高度な技術が求められます。
セーフティースクイズに必要な技術
- バッターは一塁線や三塁線ギリギリにバントの打球を転がす技術が必要
→守備の正面に打球が転がると、三塁ランナーがアウトにされてしまうため - ランナーは打球が転がってからのスタートでも間に合う脚力が必要
→走力が足りないと、ホームでアウトになる可能性が高いため - ランナーは素早い打球判断が必要
→「転がったことを確認」するのは早ければ早いほどセーフになる可能性は高いため
→セーフティースクイズは高度なバント技術、高度な走塁技術が必要な作戦
以下は、見事にセーフティースクイズを決めている動画です。
ぜひ合わせてご覧ください。
【参考】ツーラン(スリーラン)スクイズ
厳密には「スクイズの種類」ではありませんが、ツーランスクイズ(スリーランスクイズ)についてもご紹介します。
1回のスクイズで、2得点を奪うことをツーランスクイズと呼びます。
(3得点を奪うことをスリーランスクイズと呼びます。)
スクイズで二塁ランナーまで生還するスーパープレーです。
二塁に瞬足のランナーがいて、さらに相手の守備に隙が生まれた場合に決まるプレーです。
是非、以下の動画も合わせてご覧ください。
スクイズを成功させるには?
スクイズを成功させるには、どのような条件・意識が必要なのでしょうか。
ここでは、スクイズ(スーサイドスクイズ)を成功させるには?という観点で解説します。
スクイズのサインを出しやすい場面
スクイズのサインを出しやすいケースは以下のような場面です。
スクイズのサインを出しやすい場面
- ボール先行カウント(3ボール1ストライク、2ボールナッシング、等)
→相手がウエスト(ボールを大きく外す)して、スクイズを防ぐ作戦が取りづらい - ランナーが一三塁
→一塁手は牽制のために塁上に立つので、スクイズの打球に突っ込みづらい
→最悪、三塁ランナーがアウトになっても、一塁ランナーが進塁してチャンスが継続 - 相手投手が左投手
→左投手は三塁側が見えづらいため、三塁ランナーはスタートを切りやすい - 相手投手のコントロールが良い
→ストライクゾーン近辺に投球される可能性が高い(=バントしやすい)
スクイズのサインを出しづらい場面
- ストライク先行カウント
→ウエストされる可能性が高い
→スリーバント失敗で三振となる可能性がある - ランナー満塁
→ホームはフォースアウトとなるため、決めるのが難しい - 相手投手のコントロールが悪い
→すっぽ抜けなど、バントしづらいコースに投げられる可能性がある
ここで登場した野球用語(スリーバント、フォースアウト)については、以下の記事で詳細に解説しています。
ここでの説明は割愛しますが、「良く分からない」という方は以下の記事も合わせてご覧ください。
バッターが意識すること
スクイズのサインが出た時に意識することは以下の3点です。
- 確実に打球を転がす
- 相手守備の正面に転がさない
- ギリギリまでバントの構えを見せない
絶対にやってはいけないことが、空振りとフライ、見逃しです。
三塁ランナーがアウトになってしまいますよね
確実に打球を転がすことは最低条件ですが、その中でも相手の正面に転がさないことも重要です。
相手の捕球が遅れたり、態勢が崩れるほど三塁ランナーが生還する可能性は高まります。
また、ギリギリまでバントの構えを見せず、相手守備のスタートを遅らせることも大切です。
ランナーが意識すること
ランナーが意識することは、とにかく早くスタートを切ることです。
とはいえ、早すぎると牽制でアウトになったり、ウエストされるリスクも高まります。
相手投手が投球動作に入った瞬間(ランナーから目を切った瞬間)を狙ってスタートを切るのが重要です。
プロ野球はなぜスクイズが少ないのか
高校野球などのアマチュア野球では、珍しくないスクイズですが、プロ野球では珍しいプレーです。
では、なぜプロ野球ではスクイズは少ないのでしょうか。
考えられる理由を列挙してみました。
- 守備のレベルが高いのでスクイズが決まる可能性がアマチュア野球より低い
- ファンありきの興行である
→ヒットやホームランの方が喜ぶファンは多い - プロ野球選手はアマチュア時代は4番打者タイプの選手が多い
→バントがそれほど得意ではない - 一発勝負ではない(リーグ戦)なので、大きなリスクを取らない
必ずしもこれが正解というわけではありませんが、このような理由が考えられます。
様々な理由が重なり合って、プロ野球ではスクイズに慎重になっていると言えますね。
スクイズ まとめ
もう一度、スクイズのポイントを再掲載します。
当記事がスクイズの理解に役立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
スクイズとは・・
- ランナーを3塁に置いた場面で、1点をもぎ取りにいく作戦
- バッターがバントで打球を転がす間に、ランナーがホームに生還することを狙う
- 1アウトまたはノーアウトであることが条件
(2アウトでバントをしても、打者アウトでチェンジとなるので無意味)
スクイズのメリット
- 打率の低い打者でも得点が期待できる
- ヒットを打つよりもバントで打球を転がす方が一般的には簡単
(=ヒットを打つよりも確率が高い)
スクイズのデメリット
- 相手にスクイズを読まれた場合、3塁ランナーがアウトになる可能性が高い
(バントが届かない場所にボールを外される等) - 失敗した場合、攻撃の流れが途切れてしまう
関連記事のご紹介
- 中上級者向けの難しい野球ルールクイズ
→【クイズ付!野球用語集】少し難しい野球のルール17選【全部説明できる?】 - 初心者向けの野球の基本的なルール
→【初心者向け】野球のルールを簡単に解説【6歳でも理解できる!】