当記事では、野球におけるボークのルールを解説します。
プロ野球等でもボークが宣告される場面は時々見られますよね。
その時、なぜそのプレーがボークなのかを説明できる人は野球ファンの中でも多くはありません。
ボークは13種類もの種類が存在する難しいルールなのです。
当記事では、この13種類のルールをかみ砕いて説明しますので、参考にしていただければ幸いです。
筆者のプロフィール
野球観戦歴20年超の野球オタクで、元球場職員の経歴を持ちます。
愛読書は公認野球規則で、野球のルール解説も得意としています。
ボークとは?ルールの概要をチェック
まずはざっくりとボークについて説明します。
ボークとは、投手の投球や牽制における反則です。
打者や走者が混乱しないよう、投手には細かいルールが決められています。
この細かいルール(13種類)に反した時、ボークが宣告されます。
公認野球規則で定義された13種類のボーク
ボークはルールブック(公認野球規則)で13種類が規定されています。
13種類のボークは以下のとおりです。
赤字は特に発生頻度が高いものです
- 投手板に触れている投手が、投球動作に違反した
- 投手板に触れている投手が一塁または三塁に偽投した
- 送球する塁に足を踏み出さなかった
- 走者のいない塁に送球した/送球のまねをした
- 反則投球をした
- 打者に正対しないうちに投球した
- 投手板に触れないで、投球動作を行った
- 不必要に試合を遅延させた
- ボールを持たずに投手板付近で投球するまねをした
- 正規の投球姿勢の後、ボールから手を離した
- 投手板に触れている状態でボールを落とした
- キャッチャースボックスの外にいる捕手に投球した
- 完全に静止しないで投球した
これだけ見ると、「分かったようで、良く分からない」といった感想ではないでしょうか。
以下、実際の事例等もご紹介しながら順番に解説します。
1.投手板に触れている投手が、投球動作に違反した
「投球動作に違反ってそもそも何よ?」という声が聞こえてきそうですね。
この種類のボークのポイントは以下のとおりです。
- 投球フォームを途中で止めてはいけない
- 投手板(プレート)に触れている場合が対象
具体的には以下のようなプレーでボークが宣告されます。
- ワインドアップでふりかぶった(両手を頭上に上げた)のに投球しなかった
- セットポジション(胸やベルトの前でボールを持って静止した)にもかかわらず投球しなかった
- 投球の途中に転んで投球できなかった
- 両肩が動いた(投球を始めた)あとに牽制をした
以下の動画はセットポジションに入ってから投球しなかったケースです。
ボールを持って静止しているにもかかわらず、投球していないため、ボークが宣告されています。
なお、このルールのポイントは「投手板に触れている投手」が対象という点です。
この動画のメンドーサも、投手板から先に足を離していれば何も問題なかったわけです。
タイムを取るときはまず投手板から足を離すは基本ですので覚えておきましょう。
ただし、投手板から前に足を踏み出してしまうと、これもボークを宣告されるので注意が必要です。
投手が「間」を取るときは必ず投手板の後ろに足をずらしています。注目してチェックしてみてください。
このルールを理解するためには、投球姿勢の理解が重要です。
投球姿勢(ワインドアップやセットポジション)については以下の記事を参考にしていただければ幸いです。
2.投手板に触れている投手が一塁または三塁に偽投した
発生頻度は稀ですが、プロ野球でも時々見られるケースです。
牽制の偽投(投げるふり)を一塁と三塁に行う場合、必ず投手板から足を外す必要があるのです。(二塁は踏んだまま偽投してOK)
投手にプレッシャーがかかる場面では「つい」やってしまうようです。
以下は実際にこのパターンでボークが宣告された事例です。
なお、投手板から足を外して偽投した場合はボークは宣告されません。
3.牽制する塁に足を踏み出さなかった
牽制をするときは、その塁にしっかりと足を踏み出す必要があります。
特に左投手が一塁に牽制する際に宣告されることが多いです。
打者に投げるふり(ホームに足を踏み出す)をして、牽制を入れるフェイントのようなプレーを防ぐことになります。
4.走者のいない塁に牽制した/牽制のまねをした
かなり珍しいプレーですが、走者のいない塁に牽制や牽制のまねをした場合、ボークとなります。
投手がランナーの位置を誤解した場合に起こるプレーです。
プロ野球はもちろん、アマチュア野球でもかなり珍しいプレーです。
超マニアックなルール
無人の塁がアピールプレイの対象の塁である場合、ボークを取られることはありません。
※中上級者向けの記事ですが、アピールプレイについては以下の記事で解説しています。
5.反則投球をした
クイックピッチがこのケースの代表例です。
クイックピッチとは、打者が構える前に投球することを指しています。
特にバッターがよそ見をしているときに投球すると大事故の危険性もありますので、厳密に守られているルールです。
このケースは私は実際に見たことはないですね・・
6.打者に正対しないうちに投球した
クイックピッチとほぼ同義ですが、打者への不意打ちのような投球は禁止されています。
投手は打者に「これから投げるぞ」ということを明確に示す必要があるとされています。
セットポジションやワインドアップを適切に行っていれば、この反則に該当することはまずないでしょう。
7.投手板に触れないで、投球動作を行った
投手板を踏むことは投手のルーティンであることがほとんどですので、めったに見れないケースです。
投手板を踏まなくて良ければ、どこからでも投球することが出来てしまいます。
(極端に言えば、打者に近づくこともできてしまいますよね)
そのため、投手が投手板を踏むのは野球の基本中の基本です。
8.不必要に試合を遅延させた
リードが大きくない走者に繰り返し牽制するなど、時間稼ぎと思われるプレーはボークの対象となります。
なお、野球は制限時間のあるスポーツではありませんので、遅延行為が起きることはほとんどありません。
アマチュア野球では、遅延行為に対して「ボール」を宣告することもあります。
9.ボールを持たずに投手板付近で投球するまねをした
投手がボールを持たないで投手板に立つか、これをまたいで立つか、あるいは投手板を離れていて投球するまねをした場合、ボークとなります。
そんなケースあるの?と思う方もいるのではないでしょうか
実は実際のプロ野球でもこのボークが宣告された事例は存在します。
1999年4月3日巨人対阪神戦で、隠し球を試みた巨人の投手・桑田がこのケースのボークを宣告されています。
巨人三塁手・元木がボールを持ったまま、桑田が投手板を跨いだとされたためです。
隠し球自体が減った近年においては、このボークも非常に珍しいものと言えるでしょう。
なお、隠し球については以下の記事で事例も含めて詳細に解説しています。
10.正規の投球姿勢の後、ボールから手を離した
投手が正規の投球姿勢をとった後、実際に投球するか、塁に送球する場合を除いて、ボールから一方の手を離した場合、ボークが宣告されます。
言い換えると、投手板から外さずにボールから手を離してはダメというわけです。
「間」を取るときは投手板を外してから、は基本でしたよね。
投手板を踏んだ状態であれば、ボールを持ち換えたりするだけでもボークが宣告されることもあります。(程度によりますが)
11.投手板に触れている状態でボールを落とした
故意が偶然かにかかわらず、投手板に触れている状態でボールを落とすとボークです。
ボールが上手く握れなくて落としてしまう場合や、投球フォームの中で足(太もも等)にボールが触れて落球してしまうケースなどがあります。
珍しいプレーではあるものの、プロでもアマチュアでも時々見られるボークです。
12.キャッチャースボックスの外にいる捕手に投球した
かなりマニアックなルールですが、実はキャッチャーの動きでボークとなる場合もあります。いわゆるキャッチャーボークです。
キャッチャーは、投球前は両足をキャッチャースボックスに入れておく必要があります。
片足でもはみ出していた場合、ボークとなります。
敬遠の場面に気を付ける必要があるルールでしたが、近年のプロ野球は申告敬遠が導入されたため、このボークが生まれる可能性はゼロに近いでしょう。
13.完全に静止しないで投球した
プロ野球選手でも時々やってしまうケースですが、完全に静止しないで投球するとボークです。
基本的に投手は胸の前やベルトの前でボールを1~2秒持って静止します。
この静止を怠るとボークとなります。
以下は静止しなかったためにボークが宣告された動画です。
リズミカルに揺れたまま(静止しないで)投げてしまっていますね。
なお、「静止」の判断は審判に委ねられており、1秒等といった明確な定義は存在しません。
ボークが宣告された場合のペナルティ
ボークが宣告された場合のペナルティは以下のとおりです。
走者がいる場合 | 全ての走者に安全進塁権が1つ与えられる |
走者がいない場合 | 反則投球に該当した場合、コースにかかわらず、ボールとなる |
走者がいる場合に厳しいペナルティが与えられますね。
「安全進塁権」と言われると難しく聞こえますが、ようするに1つ塁が進むわけです。
三塁に走者がいる状態でボークが宣告されると、相手に1点加わります。
野球にボークが必要な理由
かなり細かくボークのルールは規定されていますが、なぜこのようなルールが必要なのでしょうか。
それは、打者と投手、走者と投手の真剣勝負を演出するためだと考えられます。
ボークのルールが存在しなかった場合、投手は打者や走者タイミングを惑わすため、様々な動きを取り入れることが可能になります。
なんでもありのルールになりますよね。
極端な例を考えてみましょう。
- 打者に投げるふりをしてタイミングをずらす
- ノールックで牽制する(手首のスナップだけで牽制する)
こういったことが可能になると、現在の野球のバランスは維持できないでしょう。
ボークは野球を「野球」として維持するための重要なルールなのです。
【中上級者向け】ボークの投球を打者が打ったら?
最後に、中上級者向けの少しマニアックなルールをご紹介します。
ボークが宣告されるとその時点でボールデッドとなり、全走者に安全進塁権が与えられます。
では、このボークの投球を打者が打ったらどうなるのでしょうか。
これはかなり打者有利にルールが設計されています
ボークを打つと、それがヒットやホームラン等良い結果の場合はそちらを優先することになっています。
逆にゴロや空振り等であれば、その結果はなかったこととなり、ボールデッドで走者が進塁します。
明らかにボークと気づいた場合は、とりあえず打者は振ってみるのがお得なのです。
ボーク まとめ
もう一度13種類のボークを掲載します。
- 投手板に触れている投手が、投球動作に違反した
- 投手板に触れている投手が一塁または三塁に偽投した
- 送球する塁に足を踏み出さなかった
- 走者のいない塁に送球した/送球のまねをした
- 反則投球をした
- 打者に正対しないうちに投球した
- 投手板に触れないで、投球動作を行った
- 不必要に試合を遅延させた
- ボールを持たずに投手板付近で投球するまねをした
- 正規の投球姿勢の後、ボールから手を離した
- 投手板に触れている状態でボールを落とした
- キャッチャースボックスの外にいる捕手に投球した
- 完全に静止しないで投球した
実際のボークを見て、なぜそのプレーがボークなのか説明できれば立派な野球オタクです。
当記事を何度もご覧いただき、ボークの理解を深めていただければ幸いです。
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